簡易実験
まだ重い腕を引っ提げて建築現場に向かう、何て言うか右腕だけ鉛になっているような感覚だな、それもライターか何かでジリジリ炙られて熱を持った物に。
重く動きはぎこちなく熱く固い、今までだって酷使はしてきたし、慢性的ではないがそれなりに筋肉痛とも戦ってきたがこれは過去最大だな。
少なくとも俺の記憶の中に右腕がここまで言うことを聞かなかった覚えがない、全身とかならまだしもだ。
ただ幸いにして左腕と両足は元気そのものだし動き回ることに差し障りがない、とりあえず最低限の動きができるだけマシだと思おう。
とりあえず加工した竹をセットしていく、これで補強にはなっているんだろうが、そもそも水の流れは大丈夫なのかね? 特に水平とか考えずに掘ったしな、とりあえず足りないだろうが水筒の水でも流すかね。
少し戻って合流地点から水を流す、やはり満たすには足りないが合流地点から緩やかにでは有るが逆流せずに進んではいる、完成まで残り数十メートル、竹はもうないから取りに行く必要があるがとりあえず一安心だな、少なくともスタート地点から逆流とかは無いらしい。
そのままゆるりと水は進んで一つ目の竹を越えて二つ目に、重なった部分も問題なくぽたぽたとだが越えていき、そのまま流れていく、とりあえず実験は成功だな、これ以上は完成してから鍋を全て使っての作業となるだろう。
さて、時間が余りまくっているし竹でも補充しようかね、運ぶだけなら左腕だけでも可能だろうし。
のんびりと森を抜けて竹林に到着する、やはり夏も近付いて青々としているな、物凄く美しい光景であるとは思うのだが、同時に宝の山にしか見えないのはかなりこの生活で毒された結果かね。
仮に今の俺が純金の塊を見たとして、そこに価値を見出だせるかと問われれば難しいとしか答えようがない。
残念ながらこの生活では活用法なんかないし換金もできない、したとしても使えない、そんな物より食料とか何かしらの器具とか材料とかの方がお宝だ。
竹を数本担いで森を抜ける坂道を登っていく、とりあえずこれで足りるだろうか、むしろ余るだろうが補修分とでも思うとするか。
排水路や壁は、まぁそこまで急激にボロボロになるとも思えないが、それでも弱いものや気付いていない虫食いとかで数カ月後にどうなっているのかは不明だ、とりあえずその分だけでも交換して補修できる程度の数は必要だろうし、タイミングを見てもう少し運び込むかね。
とりあえず今日は残った時間で加工、どうせ終わらないだろうが少しでも進めていこう。
苦心しながら1時間、なんとか二本の加工は終わったがやはり倍以上の時間を費やしているな、右腕が動くなら少なくとも運び込んだ四本は加工が終わっている筈だ。




