答え探し
さて、とりあえず一斗缶を使える状態へ加工する必要があるか、他の材料集めはその後だな。
とりあえず下部に穴を開けて焚き口に、上部にも穴を開けて煙突の入り口にってところか、とりあえず釘と金鎚で少しずつやっていくしかなさそうだな、幸いにして道具となる釘は山ほどあるし、曲がったり折れたりしても問題はない。
ガンガン音を立てて一斗缶をぶったたく、何度も金鎚が釘を捉える度に歪んで凹んで、耐えきれずに小さな穴が空いた。
後はこれをミシン目のように一週させていくだけだな、まぁ体力考えると下部だけで1週間、上部も含めると10日くらいかね。
まぁ全てを石で組むとしたら材料だけで一月は掛かるし、周りを石で固める形状となるこの方法なら一週間は短縮できるし、粘土の使用量が減る、残念ながら量に限りがあるし探すとなると時間はうなぎ登りに浪費する、それを考えると必要な工程の筈だ。
ひたすら金槌を振るう中で幾つもの穴が空いていく。
「ねぇ、何か手伝える事はない?」
そんな言葉が投げ掛けられた。
そう言えば昼御飯後から所在なさげと言うかやるべき事が見付からない墨巣さんを放置してしまっていたな。
「うん? あまり手伝ってもらうのも悪いと思うが、有ると言えば有るな、とりあえず石が大量に必要となる、形状は自由でサイズは焼き石調理に使ってる物より大きめってところか、ただ墨巣さんは墨巣さんのしたいことを優先してくれて良いんだぞ?」
「あのね、生活に直結するんだから手伝うのは当然で変に気を使われるのは御免よ、もしも私を客人とでも思ってるなら考えを改めなさい、私は言わば居候、貴方や御家族の庇護がないと生きていけないのよ」
あまりにも卑屈に過ぎると思う、彼女の性質、能力で言うなら俺の、いや祖父の庇護等なくても存分に動ける筈だ。
例えば学校と五輪のコーチ、先輩など頼れる存在は居るだろうし、当然ながら選手は別にしてもコーチや競技連盟なら敏腕の弁護士くらいは抑えているだろうし、彼女の事情を考慮して動くくらいは可能な筈だ、流石に我が家みたいに、と言うか今のように苛烈な物ではないだろうが数年と待たずに解決可能だろう。
とは言え、関わってしまった、既に関係を築いてしまった以上、残念ながら彼女の取れる手段は無かった、というより幾つか有った選択肢を奪った形になるのか。
「どうなんだろうな、いろいろと思うところがあるし、答えも出そうにない、ただまぁ客人というより友人として頼もうか、或いは共に生き抜く良き隣人でも、共犯者というのは少し違うが共生関係かね、何にしても動いてくれるなら助かる」
残念ながら悩むには問題が有りすぎるし、悩んだところで既に答えが出てしまっていると言える、墨巣さんはここに居る、それが全てだし、変えるには状況が終息する必要がある、その上で俺ができる事は何もない、だからと言って気にしないとはいかないが、さてしばらくは夜に頭を抱えて過ごすだろう。




