のんびり
のんびりと拠点に戻り、のんびりと装備を整えて、のんびりと磯へと向かう。
本来なら10分と掛からずに済ましてしまう動きをたっぷり20分近く掛けて行く。
体を焚き火で暖めている墨巣さんは流石に戦線離脱というか、磯に行かせる訳にはいかないし、今日は小魚オンリーの夕食だな、まぁ米を炊くという気持ちが強いからホドホドで抑えるつもりでもあるのだが。
何時ものようにホースをセットして水を抜いていく、テキパキと鍋でも汲み出して一気に潮溜まりが小さくなっていく。
希に異変に気付いてか、或いは本能的に察知してか、飛び出してきた小魚が逃げていく事も、本当に希だが有る。
だが素早く済ませば助走、いやこの場合は助泳かな、いずれにしても足りずに岩場で跳ね回るという結果になる、一匹程度でも逃がせば大きいからな。サイズ的には小ぶりでもその結果は大きい、逃した魚はと言う奴なのかね、まぁ気分的な問題でしかないのだが。
今日は何故か珍しく、鰯と共にタコが二匹も捕れた、こっちの磯だと本当にいないんだよな、餌が少ないのかね? 確か貝とか蟹とか食べるんだったか? 確かにシェルター側と違って全く見掛けないが、その分だけ小魚は多いしそちらを食べに来ると思うんだがな。
かなりのほくほく気分で拠点に戻る、今日はタコ飯に鰯の煮付、タコの塩焼きといこう。
タコを処理して米と共に炊き込む間に鰯と残ったタコの処理も済ませていく、流石に今から焼いてもご飯が炊けるタイミングを逸脱するため少し放置だな。
頃合いを見計らってタコと鰯を仕上げていく、と言うか単純に火から土鍋を下ろして蒸らしている間と言うのがベストタイミングだから然ほど気合や気概を入れる必要はないのだが。
ただ物凄く良い匂いが充満しているため、空腹を刺激して、それとの戦いにはなってしまう。
大変満足な夕食を終えて、かなり気分が良い、なんと言うかご機嫌と言うか興が乗っているって感じだな、やはり人間腹が膨れないと気分が乗らない、腹が満たされれば大抵の事はなんとかなるなんて言うが、真意をついていると言うか真理にたどり着いた答えと言える。
今この一時を謳歌するくらいの贅沢は許されるだろうし、もう少しばかり浸りたい気分だ。
俺の場合気持ちの良い目覚めというのは中々に珍しくない、むしろ眠気が残った目覚めの方が少ないのだが、今日は目覚めたくないというか、まだ眠い。
疲れが残っている感じはしないが睡眠欲求が暴走しているな、とは言え冷たい水で顔を洗えばシャキッとするだろう。
重い瞼を無理矢理開いて、重い身体に力を巡らせる、さぁ今日を始めるとしようか。




