警戒網
一本だけ残っていた竹を節毎に切り分けて、片方だけ節を抜く、それぞれに穴を空けて紐を通し、張ったロープに割った竹と共に掛ければ鳴子の完成だ。
ロープに触れればカラカラ、コロコロと鳴り響き、警戒心の高い動物なら避けて通るし逃げていく、やはり長くは持たないだろうがしばらくは持つ筈だ。
本来なら細いやつを束ねた奴を使うのだが、使えなくはない筈だ、少なくとも気休め程度の効果はある。とりあえず昼食を終え拠点の回りに拾ったロープを張り巡らし、警戒網の設置を済ます。
地面からの高さ30センチに張られたロープに触れれば、鳴子のカラコロと音を出す、仮に触れた何者かが逃げ出さずにいたとしても、俺がすぐに気付いて警戒できるし、来た方角が解る、それだけでもかなり違う筈だ。
時間も余っているし、とりあえず漂着物拾いをしよう、竹細工をするには材料がないし、他の作業をするには時間が心許ない、漂着物拾いならすぐに夕飯の確保に向かえるし、仮に無駄足は踏んでも無駄はないだろう。
ごちゃごちゃのゴミの山を崩しながら流木だのを放置し、何かを探す、メインターゲットはロープだな、かなり消費したし補充したい。
ザイルもあるがあまり使いたくはない、やはり強度が必要な場面での使用を考え、それ以外はボロボロでも使えそうなロープというのが理想だ。
砂に埋もれた布切れとか、空き瓶に空き缶にお菓子の袋にタイヤ、海はゴミで汚れてるなんて聞いた事は有ったがここまでとは思ってもみなかった、毎月毎月、砂浜の清掃員ボランティアを募集してたサークルが有ったが、その理由がようやく解った。
それでも使えそうな物は多少はある、持ち手の掛けた土鍋はまだ使えそうで、ようやく塩の確保ができそうだ。釘の刺さった板は釘だけを拝借する、鳴子に穴を空けるためにフライパンについてたネジを外して利用したが、これからはコイツが使える、やや錆びてるから焼き直ししないとだが。
わりと使える物を拾った事で機嫌良く漁に向かう、とりあえず牡蠣を採り、ひとつ目の潮溜まりから蛸を捕ったところで雲行きがさらに怪しくなり、暗さがいっそう増す。
かなり早いが帰ろう、まだなんとか夕日の明かりが雲を抜けて見えてはいるが恐らくは一時間と持たない、走れ走れ急げ急げだ。
蛸をテキトウに洗い、牡蠣を洗った土鍋に水と共に入れて火に掛け、蛸を炒めだしたところでポツポツと雨が降りだす、が後五分、いや三分は火に掛けたい頼むから持ってくれ。
願いも虚しく二分強で火が消え、本格的に降りだした、急いで中華鍋と土鍋をテントの中に持ち込み、竹の端材で作った鍋じきに置く、もう余熱に期待するしかないな、雨でかなり冷えただろうけど。




