玄人
一本はそのまま拠点に転がしておいて、残る二本の竹を建築現場に持ち込む途中で墨巣さんとすれ違う。
まだ薪は半分以上、俺もできるだけ早く手伝いに回りたいが、さておおよそ3日は先か、その頃には七割は搬入済みだろうか? とにかく作業を進めるとしよう、1日でも早くは無理でも1時間くらいなら短縮できるはずだ。
さて、とりあえず竹をセットしていくだけだが、さて勾配的に二ヶ所程小細工が必要となるだろう。
とりあえず並べるだけ並べてみるがやはり弧を描いている二面に関してはガタガタだな、少々面倒だが曲げる必要があるか、それに直線で繋げると水が溢れて意味がなくなるし受けを作る必要もあるか、何よりサイズが合っていないな。
とりあえずサイズを合わせる必要もあるが割らないとか、フムもう一本竹が必要になるな。
とりあえずサイズを合わせてカットする、そこから割って二つの側溝を作る、まぁ曲げる必要もあるから一度持ち帰るか、ついでに竹を一本取りに行くとしよう。
再度墨巣さんとすれ違って拠点に割った竹を放置して、再度竹林を目指す。なんと言うか無駄な手を打ちまくっている感じだな、すでに四手くらい損をしている気分になる。
転がっている竹の中から適当なサイズの竹を一本担いで拠点に戻る、加工は後としてまずは曲げだな。
ついでに昼御飯の仕込みを済ませれば頃合いとしては調度良い筈だ。
炎で炙って竹を曲げていく、流石に割った竹だと難しいが、この辺りの感覚はあのお爺さんから学んでいる、元とは言え職人、退職後の暇潰しにと竹細工をしていたがその技術は折り紙つきだったんだ、弟子入りというほどカッチリしたものではないが趣味の範疇からやや離れる程度の技術は教えて貰っている。
ある意味彼の最後の弟子が俺と言える、まぁ職人として活躍する兄弟子達とは比べるまでのなく劣った弟子ではあるが、少なくともちょっとした加工くらいなら素人よりは上、ギリギリ玄人に手が届いている。
きれいに曲がった側溝だが、さて流石に測った訳でもないからズレが出るだろうな、微妙な調整も必要だろうが流石に今から建築現場に行ってチェックは無理だな。
魚を焼いていく、今日はそこそこのサイズの味だな、久々にナメロウとかも食べたいが生姜や紫蘇が無いしな、残念ながら塩焼きにするしかない、まぁ味噌もないからそもそも無理なんだが。
いい感じに焼けていく魚を皿代わりの竹に盛り付けていく、なんと言うか当たり前の光景では有るのだが改めて考えると凄い光景だな。
竹の器に焼いた魚、竹の箸と何処かの料亭とかで出てきそうな感じだ、残念ながら川魚ではないしミョウガとかも添えてないから片手落ちも良いところだが。




