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朝よりは

 「これ、詰んだわね、敗けを認めるわ、参りました、チェスってどうやったら敗けを認めた事になるの?」

 「基本的に敗けを認めて握手だな、簡略化して頭下げるだけとかもあるけど、今回の場合はもう決着は着いた事になる」

サークル内だとすぐに入れ換え戦をやるために負けた方が盤をクルリと半回転させる事が敗北宣言になっていたな、たまに全く意図していない瞬間にやられて意図していない詰み筋を見付けたりするんだよな、そういう時は勝った気が全くしない、なんと言うか勝負に勝って読み合いに完敗みたいな空気になってしまう。


 「案外長期戦になったけど、貴方から攻める気概を殆ど感じなかったんだけど、何時もそうなの? それとも手加減のつもり?」

 「いや、何時もだな、基本的に防衛戦の方が得意なんだよ、正確に言うとカウンター戦法が得意で好きなんだ、だからどうしても長期戦になるな、まぁ守りを固める前に崩されてグダグダの泥試合とかもよくやるけど」

特に望との対戦は泥試合ばかりだった、それでも負け越してるから棋力の差は歴然で、どう転んでもそこそこの実力というのが俺の限界なんだろうな。親父とかが相手だと必敗だし、普通に打つ分には勝率はそれほど高くない、コーヒーでも賭けてたらかなり高くなるが、それでも運が絡まないから相手のウッカリが出るくらいで、それに気付くかどうかは俺次第、残念ながら運否天賦以外の賭け事においては幸運も息を潜める。


 「まぁ、今回は初対戦に近いから意図的に苛烈な守りを固めたから長期戦も狙い通りだな、久々の対戦だから安全策を取ったというのも有るがな」

 「なんと言うか当たり前だけど、初めから勝ち目が無かった感じよね、守りを固めた経験者に勝てる筈もないもの」

守りを固めた敵を倒すには三倍の戦力がと言うが、いや籠城戦だったかな、いずれにしても同じ手札のチェスの場合、この三倍の戦力は戦略で何とかするしかない、囮や餌、犠牲等の方法を使い、相手の防衛線を崩して攻め込む、その辺りの緩急や棋力は一朝一夕には身に付かない、知識と経験、後は才能だな。


 「否定はしない、俺も同レベルか格上相手だと守りに入られればまず負けるし、恐らくにはなるけど墨巣さんが守りに入ってもそこそこ苦戦して、場合によっては負けるだろうな」

 実際に格下と絶対の自信を持っては言えないのだがサークル内序列最下位の奴は俺と同じく防衛戦を主とする奴で、彼との対局はとにかく長引くのが常だった、お互いにとにかく守り、とにかく誘いで混戦等という生易しくない異様な戦いが続き、スタミナ切れでミスを誘発してからが始りという状態だ、それでもギリギリ勝ち越せてはいるのだが。

「さて、もうちょっとで水も退いていくだろうし、かなり早いが磯に向かうか」

そんな風に話を切って準備を済まして立ち上がる。


 疲れは相変わらずだが朝に比べるとかなりマシだとは思う、少なくとも動きたくないレベルではない。

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