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詰み

 「何処の大学でもあるのね、私の所だと陸上部だけとかのサークル毎でしか通じないけど、貴方の大学だとどうなの?」

 駒を戻しつつの質問に

「全校範囲だな、少なくとも同期なら七割くらいには通じるよ、酷くなると教授陣も知ってたりしたな、ミスター腕毛とかはおそらく新入生以外は通じていたと思う」


 部活勧誘において、その逞しい胸筋を見せびらかすために上着を脱いだが、逞しい腹筋やらよりそのフッサフサの腕毛はもはや小型犬が腕に付いていると評された程で、あのインパクトは凄まじかったな、残念ながらと言うべきか、幸運にしてと言うべきか、付き合いは全く無かったが、伝え聞く辺りではやや脳筋気味だが比較的穏和な奴だったらしい。

 まぁ本名も知らない相手だし、伝え聞く噂が事実だとしてもあまり気にはならない、せいぜい同窓会とかで会った時に名前が出なくて困るくらいだ、それは相手も同じだろうし、そもそも同窓生だけで軽く200は超えるんだ、一同に会するなんて事はなく、ゼミとかサークル単位になるから出会うとしたら街中でバッタリで、間違いなく声を掛けたりしないし掛けてこない、おそらくあの日あの瞬間、何時の日だったかすれ違い、或いは教室を同じくしただけの他人、大学ってそんな集合体なんだよな、少なくとも俺にとってはそうだ。


 手番が回って巡って、今度は比較的普通に進んでいる、こちらはゆるりと防衛線を張って、中央と右翼を抑え、相手は左翼からの前進中、攻め駒としてナイトとビショップ二枚にお付きのポーン、こちらの攻め駒は無い、基本的に守りだからな、転じられる位置に居るのはクイーンとナイトくらいか、カウンターの札としては薄いな、まぁ純粋に守りの駒としてしか扱わないからその面だと分厚い守りとなる。

 これを崩すには相当の犠牲か、謀略による引き剥がしか、いずれにしても簡単ではない。


 そのまま十分にも満たない攻防の末、乱戦模様の取り合いになってしまった、なんと言うか物凄く慌ただしいチェスだな、だがそれももうすぐ終わるか、すでに詰み筋が見えてしまった、予想通りなら残り数手、粘られて二十手以内に決着が着くだろう、俺が攻めに転じた場合だが。

 まぁこれ以上長引かせても漁まで時間を潰すとも言えない、つまらない勝負にしかならないし、そろそろ反逆に移るとしようか。


 ポーンが、ビショップがナイトが当たり前のように進んで切り込んで、代わりにルークを失いキングまでの道をこじ開けられ、それでもすでに詰んだ、次の手番でほぼ決着だな。

 「ん、チェック」

ナイトを狙いの位置に動かしてチェックを宣告する、相手のキングが動けるのは一ヶ所のみ、ナイトを取れる駒もなく、断頭台に首を差し出す行為以外の選択肢が無い、普通に敗北を認める盤面だな、二手程戻ればもう少し粘れるがもう戻れない、残念ながらもう終わりだ。

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