至福
カパリと土鍋の蓋を取れば醤油とタコの匂いが立ち込めて一気に涎が沸いてくる、ついでに限界を迎えそうな腹から抗議の声も聞こえてくるがこれは仕方がない事だな、まぁ空腹は最高のスパイスだし、存分に味わう準備は整った、ここからは楽しい食事の時間だ。
炊き上がったタコ飯を器に盛り、焼き魚とタコの炒め物をおかずに頂く、これを一言で言うと至福だな。
ただでさえご飯と言う化け物をタコ飯と言う進化で強化したんだ、ただまぁ惜しむとすればやはり彩りや香りだな、材料さえ揃えば後もう一段階進化できるというのが口惜しい、まぁそれでも十分旨いんだが。
至福の夕飯を済ませた所で名残惜しさを抱えながら一息吐く、今日は墨巣さんが皿洗いをやってくれるそうなのでお言葉に甘えたがその辺りの順番を決めた方が良いのかね? 基本的に片付けまで含めて料理だと思っているから心苦しくはあるのだが、こう、綺麗に何も残ってない皿や汚れた調理器具を洗うのはけっこう楽しいんだよな。
いわゆる後始末ではあるのだがなんと言うか嫌いではないしむしろ好きだ、と言うのは少し変わっているのかね? そう考えるとけっこう後片付けとか好きだったな、文化祭の出し物を片すのとか、物を作った後のごみ掃除とか、そういうのかなり好きだ、綺麗好きとかではなく単純に散らかした状態からキッチリ収まるべきところに収めていく感覚がパズルゲームじみてて楽しいんだよな。
墨巣さんが戻って来たところで明日の事について聞いてみようか、是非とも細かい疑問が欲しい、そういうところから問題点が浮き彫りになるなら上々、早めの対策が打てて後が楽だしイレギュラーに対応できる。
明日は入念に準備して事に当たりたい、俺一人なら自己責任だから割りと無謀に無茶もできるんだが墨巣さんのフォローがある以上は看過できない。
「さて、粗探しはできてる? できれば忌憚なく御願いする」
「そうね、まずは漂着物だけど、どのくらいの距離と規模なら利用して何を拾いたいのか、この二点ね」
疑念というよりは質問と確認だが、まぁとりあえずは良しとしようか。
「そうだな、片道1時間くらいなら向こうのポイントより近いからその範囲ならある程度規模が減っても利用するかな、拾いたいのは多岐に渡るけど現状だと色々と足りてるし、鉄板とか一斗缶とかだな」
うん? 一斗缶、一斗缶ね、何か引っ掛かるぞ、前に、それもかなり前に拾って加工をしてないのが有ったような気がするのだが、目に見える範囲に転がってないから有るとしたらシェルターか、取りにいくのも面倒だし、明日の探索次第では無かった事にしよう。
どちらにしても一斗缶よりユーコンストーブの方が熱効率は良さそうだし、まぁ雨を考えると前者に軍配は上がるのだが。




