ディグディグディグ
ひたすら穴堀り、少し休憩して、また穴を掘る、この作業にも随分と慣れてきたな、慣れたくはないが慣れたおかげで作業は進む、なら良しとするしかないのが歯がゆいな。
状況が好転しているから良いのだが腑には落ちない、そんなモヤモヤがある感じだ、なんと言うか一夜漬けの奴に学年首席を取られた気分と言うか、結果は出ているしそれを防げなかった自分の怠慢が理由だから仕方がないのだが経過には納得できない、その辺りも飲み込んで淡々と作業すべきなんだろうな、結果さえ出していれば経過を気にする奴は足を引っ張りたい連中か犯罪行為を犯したか或いはモラル的な問題があるかだからな、大抵の場合、世間は結果が第一だ。
今回の場合は自分で結果を出して、自分で経過を気にして足を引っ張っていては笑い種にもならない、ただまぁ失敗した場合は経過を見てくれたりはするから注意すべきではあるんだが。
ツラツラと思考を加速させつつ穴を掘り続けてようやく三面が終わる、まだ時間もあるし予定通りポイントを打っていこう、ルートも選定しないとだしな。
池方向に線を引きつつ、ちょっとしたコブとか岩場とかを避けて進めるルートを選んでいく、途中で二つの水路を合流させつつ進み池に到着する、ここまでのルートだと途中のあの辺りが終点として妥当か、勾配も自然のままに無理なく掘れるしそこを終点としたところで排水に問題は起きそうにない、まぁ土が池に流れ込みはするがそれも極端な量とはならないだろうし。
かなり完成形が見えてきたな、もはや最初の頃に思い描いた物とはかけ離れてはいるし、途中で描いた物ともやはり離れているのだが、グレードはアップしたのかダウンしたのか難しいところだな。
ついでとばかりに池で手を洗う、うん? 池に水草が浮いているな、一体どこから湧いて出て、何故流されていないのか謎だが夏を前に掃除した方が良さそうだな、とは言え作業の合間を見ないとだし予定はできれば変えたくはない、とりあえず穴堀りを終えてからの方が良いか、本格的な作業前の休息みたいな位置付けになるが構わないだろう。
別にやらなくても良いのかもしれないが夏場になってワンサカ繁った水草掃除とか物凄く大変なんだよな、家に池があった頃は飼ってた鯉のために掃除してたからな、その苦労は身に染みている、今はもう埋め立てて池はないのだが夏場にちょっと目を離した間に鯉が見えなくなるくらいに生い茂る名も知らぬ水草の恐怖ったらない。
しかも刈っても刈っても2~3週間もするとそこそこ復活しやがる、とうとう祖父と俺がガチ切れて二十匹くらい居た鯉を知り合いに譲って池を埋めた過去を持つ、そもそも曾々祖父の趣味で始めた道楽で惰性で飼ってただけだしな、美しい錦鯉だろうが愛着はなかった。
それこそ毎年毎年鬱陶しくてとうとう『何時か洗いか煮付けにしてやろう』と祖父が言ってた程度には邪魔くさかったな、俺も今では完全同意だな、個人的には甘酢掛けを推したいが今はもう知り合いの庭を彩っているから無理だな、そもそも泥抜きに手間が掛かるからそれはそれで面倒だ。




