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下手くそ

 磯での漁はいつものようにホースで水を抜いての作業だが、さて目の前のコイツをどうしたものか。

  こう、物凄く目が合っているんだが、ギラギラ光るわけではないが噛まれたら痛そうなギザギザの牙とド派手な豹柄、アジに混ざって『なにか問題が有りますか?』と言いたげな存在感を放つウツボと対峙したまますでに1分程が経過してしまっている。

「さっきから止まってるけどどうかしたの?」


 どうしたものかと頭を抱えそうになっていた所にありがたい事に助けが来た、彼女の持つ銛なら安全確実に捕らえる事ができる。

「申し訳ないが銛を貸してくれ、ウツボだウツボ、コイツはかなり旨いからな逃せない」

かつて鶴子が釣ってきたそれを無理矢理蒲焼きにしたり煮付けにしたりと料理していたのだが、その食間と風味は俺の大好物の一つでもある、それも魚の中に限れば三指に入るほどの好物だ。


 墨巣さんから受け取った銛を構えて狙いを澄ます、これだけ水嵩が減って逃げる場所が殆ど無い状況だ、いくら俺でも逃す筈がない。

 動きを止めて口をパクパクしているウツボ目掛けて一気に銛を突き込む、だが身じろぎ一つでかわされて、連続の突きも空を切るだけだ、ここまでか、ここまで俺の銛突き技術は低いと言うのか、物凄く情けなくて泣きたくなってきたぞ、久々に心がへし折れそうだ。


 とりあえず無言で銛を墨巣さんに返して頭を下げる、なんと言うかカッコ悪いしダメダメだな俺、確かに細かい隙間とかはあるし水嵩も足を突っ込めば膝下くらいはまだ残っている、それでも捕れないってどれだけ酷いんだ。

 結局墨巣さんが仕止めたウツボを持ち帰り、かなり鬱な気分のまま調理を開始する、ここまで物悲しい気分での調理は祖母が死んだ時以来だな、その時と同様に体は勝手に動いて的確に魚を捌いて、着実に下拵えを済まし、確実に調理を進めている、気分の違いを口実に腕が鈍るような鍛えられ方はしていないし、事実として出来上がった料理は味に絶対の自信をもっている。

出来上がったウツボの煮付けにアジの塩焼き、カワハギの刺身と豪華絢爛だな、魚だけというのが非常に残念ではあるが海辺の料亭とかなら五千円くらいは飛んでいくメニューだ、まぁその場合はご飯と酢の物とか香の物に添え物にミョウガとかが着いてさらにワカメの味噌汁も着いてくるとは思うが。

ワカメも随分長いこと食べてないな、海草ならそれこそ磯から見える範囲で採りきれないくらいに生えているが、それがワカメか自信がないんだよな、見た目でいうと海にある状態だとワカメと昆布の違いなんか俺には解らない、下手をして食べてはいけない海草だったら大変なことにしかならないからな、残念ながら諦めるしかない。

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