不器用
さて大量の水が抜かれて干上がったと言うか少なくなったところで魚を捕らえていく。
今日はアジと河豚が大量だな、河豚は食えないから排除するとして、アジはなかなかに大量だな。
とりあえず焼き干しの入替えでもしよう、定期的に交換して新鮮さと言うか、賞味期限的に安心できる。
まぁ賞味期限なんて有って無いようなものだが、カビとか生えてなくて変な匂いがしないなら炙って食う、そのくらいのワイルドさが欲しいところだが安全のために森の肥やしになってもらう事になる。
そのため定期的な交換は必須となる、まぁ雨が降らなければ日の目を見ないのだが、後は魚が捕れなかった時のための保健でしかない、それでも必要なんだよな、無いと捕れなかった時や雨の日に待っているのは空腹だ。
雨の日ならテントに引きこもるとは言え空腹は辛い、何より翌日に響けば大変な事にしかならない、そう考えるとかなり重要だな。
拠点に戻りテキパキと墨巣さんと作業を分担しつつ魚を捌いて焼いていく、一部はそのまま干して減った分を焼き干しを炙って補填する。
墨巣さんは自分が突いたカワハギの刺身を作ってくれてるのだが、あれ刺身じゃなくてぶつ切りだよな、この辺りが自称不器用と言っていた理由かね。
こう、普通に薄造りとは言わなくても最低限の見た目にはなると思うのだが。
「えっと、代わろうか?」
恐る恐る声を掛けてしまう、なんと言うかプライドを傷付けないようにしたいが、そもそもプライドが有るかも解らないから心配自体がおかしいか。
いやおかしくないのか、クソ、思考の迷路に入った気分だ、カオスな思考の弊害の一つだな、多方面に向いて意味不明にぶっ飛んで、代わりに変な部分に引っ掛かり停滞する、いやもう停滞しているな。
「お願いするわ、我ながらこれは流石に酷いし」
そう言って差し出された半身はもはや見る影もないな、残る半分も七割近くが残念な事になっている、魚の焼き加減とかは問題ないんだがな、切るのは苦手と見るべきか・・・・・・腹を開いて内蔵を掻き出すくらいは可能らしいがそれ以降が無理と、三枚卸しにしても骨にかなりの身が残っている、これからは焼き専門になってもらうか、それとも教えた方が良いのかね? どちらにしても明日にはなるのだが。
なんとか、そう言うしかないのだが、なんとか形は整えたと思う、ぶつ切りをなんとか刺身にするという不可能に近い作業を持てる技術と集中力を注ぎ込んで最低限の見た目にはなった、まぁそれでもレストランとかで出したら客からクレームが来るレベルではあるのだが。
それでも仲間内とかで食べる分には問題ないだろう、見た目は悪いけど。
まぁ腹に入れば同じだしな、学生時代でもそこまで贅沢は言っていない、いや俺が自分で調理して自分で食ってた訳だから自己責任でしかないのだが、それに幸いにして料理の腕はかなりの物だと自負しているから、極端に変な物を食べた覚えは無かったりする。




