波瀾万丈
食事を終えて再び建築現場に到着する、さてとりあえず側溝か、少し深めに掘って壁を少し埋め込む形になるから多少の手間は掛かるが盛土の手間よりはマシだな、流石にそこそこの範囲がある床を数センチ上げるとなるとその手間も量も洒落にならない。
重機が欲しくなるくらいの作業量になってしまうからな、それに比べると若干の手間なら許容範囲内に収まってしまう。
スコップ代わりのフライパンを手に土との格闘を開始する。目指す深さとしては20センチから30センチ程、幅は10センチ程だろうか、壁を作るから少し埋め戻すがそれでも十分に雨の跳ね返りは防げるだろうし壁があるから多少の横風にも対応できる筈だ。
どんどん掘って、掘って掘りまくる、なんと言うかこの作業にも慣れたな、ひたすら掘る作業とひたすら水を汲み出す作業には近いものを感じる、具体的には中腰になって腕を動かし続ける部分が。
けっこうキツイんだよなこの体勢、本当に腰を痛めないか心配になる、定期的に腰をトントンしたくなるし体を反らしたくもなる、これをしばらくは続けるのかかなり陰鬱で億劫な気分になってきた、心が折れるのが早いかそれとも腰が逝くのが早いか、どちらにしても何処かのタイミングで作業を諦めて全く別の何かを挟んだ方が良さそうだな。
ひたすら掘ってはいるのだが片面すら終わりそうにないな、丸1日掛けてなんとかって感じになりそうか、そこから壁もとなると10日くらいは見た方が良いか、なんと言うか伸びに伸びてしまったな、本来ならもう完成していてもおかしくはない、とまでは言えないがほぼほぼ完成していた筈なんだがな、まぁ完成形が見えているから誤差としては1週間くらいだな。
そう考えると本当に色々と有ったと言える、と言うかよく1週間に収めたと言えるな、一月単位でずれ込んで台風の最中になんとか完成なんて結果にもなりえたんだ、この結果は単純にタイミングが良かったの一言だな、仮に竹を運び込む前やロープを手にいれる前に墨巣さんが流れ着いていればマジで目も当てられないくらいの遅れが出ていただろう、これもまた幸運のお陰かね。
しかし本当に色々と有ったな、この島に来てもう少しで3ヶ月、1年の四分の一を過ごした事になる、ここに来た頃はほとんど何も無くて、とりあえず上陸地点の近くにテントを張り荷物を置いて探索したんだっけか、そこからすぐに水が手に入る場所を見付けて拠点にして、探索の結果前の拠点に移るためにシェルター作って、引っ越してまた探索して、ようやく今の拠点に腰を落ち着ける事になった。
そこから薪干場と警戒網の設置に苦心して、墨巣さんが漂着して、なんと言うか波乱万丈だな、なんとも濃密な3ヶ月だ、それこそ普通なら一生掛けて味わうようなトラブルに巻き込まれてしまっている。




