運搬
筍の色や太さからしておそらくは真竹だろう竹を伐採していく、真竹なら家の近くにも生えていて、竹林の中に竹で秘密基地を作った俺からしたら使い慣れた素材である、やろうと思えばちょっとした小屋というかテント替わりのシェルターを作るくらいは軽い。難点は筍が苦味が強い事くらいで我が家では煮付けが基本だったな。
斬り倒した竹は魚を捕るための漁具作りに使うつもりだが、本拠点となる水場を見付けた日には薪を集めて干すための屋根付き小屋を建ててやろう。
筍はアク抜きが面倒だし、時間的にもう筍から竹に進化しているだろう。
そこそこの長さと細さの物を5本を斬り倒した所で切り上げて、そそくさと竹林を後にする、時間を掛けて整備したただけあって帰りは楽に森を抜けて磯に向かう。
途中で鍋を回収して磯での漁を済まし、拠点に帰還する。
いつも通りの僅かな塩気をもつ焼き魚を夕食に、明日の下準備として竹を加工するための場所を選んで、周りを掃除しておいた。
朝の漁を片手間に済まし、昨日の続きとして拾ってきた石をコの字に組んで高さを調整する。竹はそのままだと意外に加工しにくい。
幼稚園児の頃に近所に住む爺さんが竹とんぼ飛ばしてるの見て俺も作りたいと師事して長く火を使った加工も習得している、竹に関してはかなりの自負も自信も有るからな、早くに見付けられて良かった。
その経験が……高校の頃が最後か、かなり久々に役に立つな、まぁ『子供に火を使った加工法を教えるなよ』とか今更ながら考えてしまう、お湯を使った方法とかも在るわけだし。
いずれにしても最低限の舞台は整った、まぁ本来なら火鉢とか囲炉裏みたいな炭を使った奴の方がやり慣れているのだが、そこは何度目になるのかも解らない『贅沢は言えない』という一言に尽きる。
一通りの準備を終えた所で本日の昼食である貝と蛸を食べ、火の始末をしてから竹林へと向かった。
昨日斬り倒した竹の葉を落としてロープで一纏めにする、中が空洞とはいえ少し重いがそこはどうしようもない、肩に担いで地面を引き摺りながら森を抜けて海岸に出て、そから拠点にむけてゆっくりと歩く。大学時代にやった工事現場でのバイトを思い出す、給料はそこそこ良かったが翌日には体が動かなくなるオプション付きで二度とやらなかったが。
イカダを作って海から行く手も考えたのだが、どうしても本数は増えるしもしも流されれば最後、大海原を漂流して死ぬかもしれない、担いで歩くのが大変でも最善手であろう。
拠点までなんとか戻り、気だるい体を叱咤して食料の調達に動く、加工は明日以降だな、薪も必要になるし。
棒になった足で魚と蛸を捕まえ、いつものように串焼きと炒めを作り、腹に容れる、明日は朝から薪集めと大変だな、筋肉痛で辛いなら日を改めるが。




