灰
適度に煮詰まった所で竹筒の海水を加えていく、後は半分くらいまで煮詰めて一度濾して、塩が結晶化したところで濾して苦汁と分ける。
後は乾燥させれば完成な訳だが昼メシまでに間に合うかね? とにかく火を絶やさないようにだけしておこう。
適度に灰を掻き出して、適度に薪を追加して火の番を続ける、一度濾したところでそろそろ墨巣さんが作業を切り上げる頃合いだが昼メシの準備も進めておこうか。
魚を捌いて焼いてと何時ものように調理を続けながら海水の様子も確認している、この辺りの並列作業は料理をやっていたからこそだな、煮物作りつつ炒め物を作りと全ての料理が最も美味しい状態で食べられるように作る順番やら火加減やらは祖母に叩き込まれていて今この瞬間も息づいていて成長している。
いい感じに魚を焼きながら片や土鍋のチェックに勤しみ、片や刺身を切り分けつつと忙しく動き回る、ある意味において調理中が最も平行作業で忙しいんじゃないかな。
全ての料理が出来上がった頃に墨巣さんも拠点に戻り、土鍋の方も塩が浮いてきていた、食事が終わる頃にはこの半分くらいには煮詰まっているだろう。
「けっこう薪を使ったみたいね、灰と言うか燃えカスが凄いわよ」
「ん? あぁ、かなり使うんだよこれが、竃があればこの半分とまではいかないけどかなり減らせるんだがな、きちんとしたヤツならだけどお手製でも3割くらいは減らせるぞ」
墨巣さんの問いにそう返して地面に座り込む、本当なら今日辺りにでも椅子を運んだんだがな、雨のせいでかなりズレてしまっている、もう2日は我慢だな。
食事を終えて火加減を調整しつつ土鍋に集中する、もうそろそろもうそろそろ塩が精製されるだろうし苦汁と分離させる頃合いだ。
「ねぇ、見てて良い?」
そんな墨巣さんの言葉に頷く事で返答として鍋の様子と火加減を確認し続ける。
「少し、いえ、幾つか聞きたい事が有ったりするんだけど」
「ん? 片手間になるけどそれで構わないなら答えさせてもらうよ」
「そうね、別にそこまで気にしている訳でもないんだけど、一先ずは貴方の家族についてでも聞きましょうか」
なんと言うか話題を拡げたいと言うか作りたい時みたいな感じだな、まぁいいか、此方としても火を見つめるよりながら作業でもお話ししてた方が精神衛生の上で楽だ。
土鍋の様子から苦汁との分離までは1時間程、今の火力を維持したならという但し付きではあるがその程度なら話しながらでも造作もない、薪も十分あるし雲の流れも穏やかで雨が降る気配もない、イレギュラーが起こるとすれば動物くらいだな。
「さて、家族となると難しいがとりあえず事実に加えて俺の目線からの歪曲が入るがそれで良いなら話して良いところまで話そう」
「ええ、それで構わないわ、詳しく知りたいなら貴方のお父様ならネットに載っていそうだし」




