群団
ツラツラと思考を巡らしながら磯に到着するとすでにウゾウゾと潮溜まりを埋め尽くす魚たちの影が見えた。
サイズも形状も異なる魚がウゾウゾと蠢く様子は表現を選べないくらいにキモい。
コレ水抜くまでもなく掬えてしまうくらい過多なんだがどうなってるんだよ。
「うわっ」
潮溜まりの様子に気付いた墨巣さんの呻き声を俺は非難できない、と言うか俺も『うわぁ』って気分だ。
コレ、けっこうキツいな見た目がちょっと触りたくない感じなんだがそんなわけにもいかないしな、覚悟を決めて鍋を片手に潮溜まりと言うか群れとの戦いだ。
掬っては選別して掬っては選別して、ひたすら魚の数を減らすと言うか、増やすと言うか、とにかく数を繰り返していく。
ある程度の所でホースをセットして水量を減らしながら掬っていく、コレだけの大漁なら焼き干しを作ってもかなりの余裕が生まれる、この数日足らずで使いきっていたし渡りに船と言うか、かなり助かるな。
ひたすら作業となった漁を進め、とにかく大量に魚を捕らえていく、漁用の鍋では足りず、土鍋まで使っての大漁を喜んで良いのか、恐怖におののいた方が良いのか判断に迷う。
山と積まれた魚を持ち帰り墨巣さんの手を借りてひたすら捌いては焼いていく、一先ずは食べるより干す方が量を減らせるため焼いては干しの作業を進め、合間を見て腹を満たしていく、少しずつ山が切り崩されるように魚をもはや処理としか表現できないペースで片付けていく。
まだ墨巣さんの突いた黒鯛が片付いてないというのに腹八分目を超えてきている、それでもまだ鍋一杯分が残っているのだが、すでに日もトップリと暮れてしまっているが片付けない事には寝る事もできないしな、とりあえず黒鯛を捌いて刺身にしてしまおう。
そのまま焼き干しを大量生産して二人して満腹感を感じながら眠りに就く、なんと言うか最後の最後で一気に疲れたな。
目覚めと同時に体に鉛のような重さと怠さがまとわりついてくる、これはいよいよもってマズいな、しっかりと休んだ方が良さそうだ。
顔を洗い、準備を済まし倦怠感を背負いながら磯に向かう、今日もなかなかにいい天気だがチラホラと雲は見えている。
とは言えやや風が強いな、これは海も相応に荒れていそうだ。
磯に到着してホースをセットして波打つ海を見る。
これはマズいな、かなりマズい、海の向こう遥か遠くとも言えないような距離にかなり背の高い入道雲がいる、しかも空を行く雲の流れからこちらに向かってきている。
おそらく1時間もすればあの雲の下にこの島が入ってしまう。




