乱高下
鳴かず飛ばすの相変わらずと言うか、昼間と大差ない漁果に凹んでしまう、むしろ昼より酷いしな。
やはりこの乱高下する運勢だけはイタダケナイな、体質なのか性質なのかは判別できないがいずれにしても真っ当ではない、異常で異様で外道で普通とはかけ離れた何か、得をする場面の方が多いとは言え、素直に喜べるような物ではないな、恩恵に与かっている身分で、それもかなり稼いだ過去を持つ身で言って良い事では無いが少なくとも俺にとっては唾棄すべき性質だ。
かと言って、過去にこの能力を性質を特性を体質を、失った者は一人としていない、高田の家に生まれた男で在れば人生を終えるその日までコレと付き合うしかない。
魚を野絞めで処理して拠点に持ち帰る、幸いと言って良いのだろうが墨巣さんがカワハギを三尾ほど仕留めてくれた、量としては物足りなさを感じるが少なくとも空腹を水で誤魔化すような事にはならないだろう。
夕食を終えたところで明日の予定を考えるとしよう、まぁ今日の続きとして建築なのだが、とりあえず屋根は一応は埋まる筈だが隙間を補う為にピラミッド状に重ねる必要もある、丸1日使ってギリギリ間に合うかどうかと言ったところかね。
しかも完成にはまだ遠く側溝堀りと薪の運び込みと言う大仕事がまだ残っているのだ、そろそろ7月、台風が何処かでできていてもおかしくはないし、こちらに流れてくる可能性だって低くはない、少なくとも勢力圏内に入る確率は高いだろう、逸れる時は列島の南側を進んだ記憶が有るし、この島はまさしくそのルートの上に近い、天気予報をもうちょっと真面目に見てたらしっかりした予測が立てられたのだが後悔しても遅いか。
どちらにしても天気予報を見れはしないし、天気予報ダイヤルに掛けたところで列島南にポツンと存在する大中火島の天気を教えてくれる筈もないし、そもそも番号がなんだったのか覚えていないし、機能をロックされているらしいし、プッシュしても繋がらないだろう。
焚き火で良い感じに焼いた魚と炙った焼き干し、胆醤油のカワハギの刺身に焼け石で焼いたカワハギとカオスな夕食で腹を満たす。
さて今日ももう終わる、明日には魚が戻っていると良いのだがもう少し我慢だろうな、焼き干しもあまり余裕がないのだが。
「明日の予定ってどうなってるの? 私のやる事って有る? まだ慣れてないから判断に迷うんだけど」
うん、まぁそうだよな、こんな状況に陥って隣にいるのは今一つ信用性に欠ける男で、自分が何をできるかすら解らない、不安だよな、そんな雰囲気が一切ないし見せなかったから気付いていなかった、いや気付いていて見ないフリをしていたのか、しっかりしろよ俺、相手は強くて凄い物語の主人公や、芯の強さで手助けするヒロインでもない、ただの女の子だ。




