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「数日は続くらしいけどそれって、どのくらい続くの? 焼き干しの残りを考えると私が頑張る手も有るわけだし」
なるほど、確かにそうか、今は俺一人というわけではない、銛漁だと安定しないとは言え墨巣さんはこの数日確実に仕留めている実績もある、頼りっぱなしというのは問題だが必要に応じて助けてもらうのも手だな、貸しを作る一方にはなってしまうが。
「解らないと言うのが答えになるな、それでもおおよそとして1週間は続かないだろう、ただし過去の例を挙げればで例外になる可能性もあるが、どちらにしてもタラレバだな」
とは言ったものの、最近の出来事から逆算すると長くて2日半というのが俺の予想となる、焼き干しの残りや墨巣さんの頑張りが上手く運んだとして余裕で間に合うという目算が立ってしまうが、楽観はできない、この数日は晴れて、あの夜を除けばだが晴れているし一雨くる事もあるだろうしイレギュラーの因子はそれこそ山のように転がっている。
嘘や虚言、あるいは脅しというわけではないが少しばかり緊急性や危険性を見せておかないと安心してしまう、そして残念ながら安心と安全は全く別物でともすれば対極にあると言って良い程にかけ離れ相反する物だ、この状況においての安心は弛緩と停滞を意味する、それは非常にマズい。
サバイバル状況における停滞が許されるのは食糧に余裕が有り救助が見込める場合だ、それ以外だとその場に留まるにしても何かしらのアクションが必要になる、具体例としては狼煙とか空から見えるマークとかだな、今回の場合、救助は見込めるが最終手段で、それも間が悪すぎる、比較的ポジティブな要素としては食糧にかなりの余裕が有るくらいで、それにしても下手に手を出せない事情がある。
となれば、必要なのは安心感ではなく危機感、停滞ではなく行動だ。
「ねぇ、いよいよ午後から何もすることが見付からないんだけど、何か手伝える事はないかしら?」
有ると言えばそれこそ山のようにと言うのが返答となる、貸しが返せそうにないなまったく。
「一応、午後からはストップしていた薪乾燥場の建築作業を再開しようと思ってる、作業としては竹で屋根作るだけだが側溝掘りとかも有るからそっちかな? ただ警戒網を一回り大きくする必要が有るし竈用に石も集めたい、何をしたいかは君の自由だ、多少の、いやかなりの問題は有るがそれこそテントでぐうたらしても俺は文句は言えないし言わない」
「流石にぐうたらしないわよ、肺の治療中って言ってもある程度体を動かさないと鈍っちゃうじゃない、そうね、とりあえず建築を見学したいし付いていくわ」
いやむしろ休んでた方が良いんじゃないかとも思うのだが門外漢の俺が口を出すわけにもいかないし、閉ざすのが正解か、まぁ見学くらいなら負担もないし、彼女が良いと言う以上は過剰に反応するのもおかしいか。




