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クズ

 「おそらく、私を気遣っての事だと思うのですが、聞かせてください」

覚悟は決めた、それは知っているし、おそらくでは有るがなにかしら感じ取っているのだろうな、彼女から両親の事を聞いた事はないし、聞いてはいけないと思い触れなかったがその辺りに何かが有るのだろう。


 「うむ、これは前後のデータや行動、証言から得た予測という範疇を出ないが儂は九分九厘間違いないと思っている、君のご両親が強行に至った動機だが、金だ、それも数千万単位の金のためというのが儂と担当警視の見立てじゃ」

本当にロクデモナイな、あまりに救われないと言うかアホ過ぎる、俺の場合祖父と一族のせいで感覚が狂ってるから数千万は時間は掛かるが稼げなくはないという金額ではある、墨巣さんの家庭がどうだったかは知らないが、一つ言える事として墨巣さんの身体能力ならその程度片手間に稼いでしまえるだろう。

スポンサー契約とか簡単に取れるだろうし結果も出すから物によっては賞金と言うか賞与も有るだろう、スタイルも良いし美人系だからCM映えもするだろうから年間で稼げる額だ、まぁそれを頼りにするのもどうかと思うが取った手段として、普通にクズだな、感想としてこれ以上に適当な言葉が見付からない。


 「時系列として説明するが10年ほど前にご両親、言葉が汚くて申し訳ないがあのクズ共は会社の運転資金として出資を受けた、その返済に困ったのが六年前、その頃に君に多額の保険を掛けている、だが幸いにしてと言わせて貰うが経営が好転、なんとか返済すると同時に追加で融資も受けた、その返済に困ったのが数ヵ月前、6年前に掛けた保険が効力を最大に発揮し例え事故だろうと死体が出なくても死亡届けが受理されれば数千万は固いという特約がな」

「しかも、今回は儂でも流れが読めない市場の荒れようだ、吹けば飛ぶような、あんな程度の低い詐偽紛いの輸入商社なんぞ渡れる筈もない、こちらは裏取りが終わっていないがおそらく銀行の突き上げも厳しかっただろう、もはや彼らは破産するしかなかった、だが数年前に掛けて、実行に至らなかった最悪の手がそこに、それも当初より大幅に育って存在した、後はもう良心の問題だが、結果を見るまでもなくそんなもの持ち合わせていなかったらしい」


 まぁ娘に保険を掛けるくらいはやるだろうが、保険金殺人を未遂とは言え計画した時点で良心もモラルも持ち合わせている筈がない、あまりにも短絡的で自分本位で身勝手だ、こんなの刑事ドラマの登場人物でもなかなかいない真性のクズだろ。

 しかも実行してしまっている、その当事者である墨巣さんの感情は俺では推し量れない、おそらく祖父でも父でも母でも、他の誰でも不可能だ、予想する事すら憚られてしまう程に非道で外道、義憤に燃えるような質じゃないがそれでもやりきれない怒りとも異なる物が込み上げてくる。

ただ、一つだけ救いが有るなら、命は助かった、それも考えられる限りで最良の形でだ、よりにもよってよりにもよってな一族と墨巣さんは縁を結ぶ事になる、これは苛烈な結果しか招かない、助かったも同然どころかクズ共の破滅が確定している。


だからと言ってそこになんの意味が有るのかと問われれば言葉に詰まる、救いでは有っても、それは解決じゃないし、ほんの少しも墨巣さんの心を、記憶を癒す結果にはならない。

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