トレース
「ちなみにこれより大きいサイズになるとかなりの大仕事になる、と言っても今回みたいに木を、それも太い奴を斬り倒す時くらいにしかでないけど拠点を拡げたりするならそれなりに出るだろうな、どちらにしても覚えておいて損はない、料理をするにも体を温めるのにも火は使うけど燃料となる薪は自分で用意するしかないし木を斬り倒してすぐさま使える訳でもない」
「後、午後には木を斬り倒すから万が一に備えて離れていてくれ」
木のサイズ的に百キロはあるだろうし、下敷きになりでもしたら助けるのは不可能だ、枝打ちの時は別作業で離れていたから失念していたし今更になるが念には念を入れておきたい。
その場を去り作業に入る、斬り倒す方向を確認して引っ掛かりそうな木の枝を確認していく、幸いにしてしたの方に纏まっているため木登りはあまりしなくて良さそうだ。
とは言え切り落とす枝は軽く十本を越える、墨巣さんには午後にはと言ったがこの作業を昼までに終える事ができればになる、こう見るとけっこう厳しいな、午後の作業に割り込む事になりそうだしギリギリになりそうだな。
手近な物をテキパキと斧や鋸を駆使して枝を払い、少し高い位置の枝は登って切り落とす、また薪が増える事になるが墨巣さんもいる事で消費は激しい、有って困るものでもないし流用するとしよう。
一通りの作業が終わるがまだまだ切り落としたい枝があるな、とは言え全体の半分は越えたし予定より早く終わりそうだ。
拠点に戻り墨巣さんに焚き火を任せて薪の加工を済ませてしまう、できるだけ早く済ませておかないと作業が溜まる一方だし乾いてくれないから使えない悪循環が始まってしまう、ただ両刃之剣と言うか、薪を作れば作るだけ移動が面倒になるんだよな、明日には建築を再開するつもりだし再開してしまえば1週間もあればとりあえず屋根はできるし薪を運び込めてしまう、側溝はさらに時間は掛かるがそれでも10日以内には運び込む作業が待っている、今から憂鬱だな。
「親父直伝の体操って元から知ってた? いくらなんでもトレースが上手いだろ」
魚の焼き加減を確認しつつ問い掛ける、スローモーな動きとは言え完璧にトレースするのは不可能に近い、呼吸法とか手首足首の動きとか細かいところで体の筋肉を解す事ができる、意外と難しいと言うかコツが必要となる体操なんだがかなり細かい部分まで動きは一致している、観察力やセンスで片付けられるものではない。
「貴方のお父さんが竹中さん、部活仲間の足を見たときに教えたのを又聞きでね、細かい部分は流石に忘れてたけど貴方の動きを見て大体の部分と細かいコツは思い出したし解ったから」
凄いな、覚えていたと言うか思い出しただけであそこまで完璧に動きをトレースできる物なのだろうか、少なくとも俺では不可能だ、時期的に2年前、竹中さんとやらが地元に戻ったのは1年半くらい前として継続してやっていた訳でもない体操を動きを見るだけで思い出すとか、マジで運動超特化って感じだな。




