神業飛行
プロペラが止まったドローンから荷物を外し、とりあえずテントの中に入れてドローンを離陸点に設置してコールする。
数秒の間を置いてエンジンがスタートする、それを確認して電話をこちらから切る。
ユルリとユラリと機体が浮き、そのままゆっくりと空に上っていく、本当に綺麗に飛ぶな、まるで枝の方から避けていっているようだ。
飛び去るドローンを見送り、荷物の確認をしたいところだがそれは夕食の前で良いだろう、先に椅子の用意からだな。
拠点の周りに生える木の中から良さそうな太さの物を選んで倒す方向を考える、ここで方向をミスると引っ掛かって綺麗に倒れてくれないからな。
いろいろと検討した結果、最悪な事に枝打ちが先らしい、これは1日では終わらないぞ。
大まかな方向を決めた後、ザイルを用意し、斧に鋸を装着、後は登るだけだな、枝に手を掛けて瘤を足場に体を持ち上げて少しずつ上り適当な所でザイルを木に結んで体と繋げて命綱としてまた登る。
少し登った所で別のロープを使い新たな命綱に付け替え古い物はそのままにしておく。
また少し登ってなんとか上の方に手が届く距離にまで到達した。
念の為にロープで結んだ鋸で枝を切り落とし木が少しずつスマートになっていく、これはけっこう大変だな、ただ管理された木じゃないから幹が真っ直ぐじゃないし足場は有るからそこだけはかなり楽だ、まぁおそらく樫だから管理したところで多少は拡がりを見せるだろうが。
頂上と呼んで良いかは知らないが上の方が随分とスッキリしたところで命綱を付け替えてこの場の物を解いて纏めて肩に担ぐ、そのまま下に降りてまた上の方の枝打ちをしてさらにスペースを狭めていく、久々に地面に降り立ち残った枝を取り除く、後は倒す方向の木の枝を少し払えば斬り倒せるが、荷物の確認を考えればそろそろ時間に余裕が欲しい、この辺りで切り上げるとしようか。
弱冠は有る時間の余裕を使って荷物の確認をする、米が五キロに調味料、日本酒、フルーツの缶詰めが幾つか、それにタバコか。
「まさかとは思うけど貴方、好き好んで寿命縮めてるわけ? タバコなんてやめておきなさい」
共に荷物を確認する墨巣さんの言葉が心に痛いね。
つい数秒前までは忘れていたし、もう慣れてしまっていたが、目の前にすると禁煙の意思が薄れてしまう、別にヘビースモーカーだった訳でもないが嗜む程度には好んでいた嗜好品で銘柄も俺が吸っていた物だ、これは危険だな、好意で入れてくれたのだろうが厳しいぞマジで。




