身を切る
とりあえず腰掛けてみる、ガタつきもなくしっかりした座り心地だな、流石に全体重を思いっきり掛ければ壊れて大怪我となるだろうがしばらく使う分には問題無さそうだ、ただ念の為に余った材料でもう少し補強するとして、使用感の確認といこう。
「コレの使い心地を確かめてくるよ、何も無いとは思うけど気を付けて」
トイレに行く時の定例句を少し替えて拠点を離れる、普段はトイレに行くからとそのままだが今回はそっちがメインじゃないしな。
川を遡り、小さな段差を降る位置を更に越えて、少しだけ流れの緩やかな場所、余りに余裕がない時に使っていたのだがロビンソンを見掛けてからは拠点からの距離の兼ね合いでメインの場所となってしまっている。
適当な位置に置いて腰掛ける、後はいつも通りに済まして不浄の左手と薄めた洗剤で手洗い、うん問題はなさそうだな。
調整も必要無いだろうが墨巣さんが使った場合はどうなるかね、タイミングを見て聞いておこう。
さて、次は水浴びだな、昼飯までは1時間くらいあるしサッパリしよう。
「問題は無かったから使ってみて改良点が有るなら教えてくれ、それと水浴びしに池の方に行くんだけど、場所を教えたいし付いてきてくれるかな?」
「別に構わないけど、川を遡れば着くんじゃないの? 案内する意味有るのかしら」
「あー、まぁそうなんだけどな、とりあえずショートカットとして道が有るし、別に必要はないんだけどね、ただまぁ、うん良いや」
諦めたと言うか心をへし折られた、まぁそうだよな勝手が過ぎる、それに案内した所ですぐに戻って貰うことになるわけだし意味が薄い。
着替えやお風呂セットを手に森を抜け、池から川へと流れ込む位置からやや河口付近で服を脱いで川に入る、しかし身を切るような冷たさだな、雪解け水とかでは無いはずなのだがかなり冷たい。
とは言え夏を前にした蒸し暑さで火照った体が程よく冷えて気持ちいいのも確かだな、とりあえず埃とかは落とせただろうから皮脂と垢を落とすとしよう。
頭と体を極少量の洗剤で洗うが全く泡立たない、ただ油分が浮き出してきているのはなんとなく解るから汚れは取れているのだろうが、間違いなく足りてないな。
一度洗い流してもう一度洗剤で体と頭を洗う、今度は少しだけ泡立ち、残った皮脂汚れが掻き出されている事だろう、川に入って洗い流し、タオルで垢を擦り落とし、かなりサッパリする、ついでに洗濯も済まして着替えるが体がかなり冷えてしまった、早く体を暖めた方が良さそうだな。
拠点に戻ると焚き火が灯っていて魚が焼かれていた、ものすごくありがたいな、心遣いに感謝しかない。
「ありがとう、思ったより水が冷たくてびっくりだ、雪解け水とかじゃないはずなんだけどな、むしろ火山島だから温泉の確率高いし」
そんなぼやきと感謝をこぼしてしまう。




