テント
「とりあえずテントを張ってしまおうか、荷物をひっくり返す事になるかもしれないけど頑張って探してくれ、俺は設置位置を決めて用意しておくから」
そう告げて、少し悩む、焚き火を中心にするのは確定として俺のテントからはそこそこ離した方が良いだろう、かと言って山に近い位置は動物的な意味で控えたい、警戒網は有るが完璧に防げる訳ではないしな、となるとやや近い位置に張るしかないな。
移動や運搬の邪魔をしない位置となるとこの辺りだが、困った事に木々が邪魔だな、別に張れなくはないがその場合ドローンの着陸地点に被ってしまう、となると木を斬り倒すしかないのだがサイズ的に無理だな、ここまで太い木を斬り倒せばそちらの方が邪魔で片付けるのに時間が取られてしまう。
となると別の場所か、本拠地の中を歩き回りながら少しでも良さそうな場所を思案して、ようやく場所を決める、少し山側にはなるが下草を刈るだけで張れるし、なんなら俺のテントを移動させても良い、その辺りは擦り合わせておこうか。
「えっと、位置的に山に近いんだけどどうする? 警戒網は張って有るけど動物の危険度はそこより高いけど、ただまぁ、ほんの数パーセント無いくらいの差で現れたらどっちにしろアウトだけど」
俺のテントを指し示しながらそう問い掛ける。
どっちにしてもゴリラの豪腕なら容易く壊せるだろうし、寝惚けている時に襲われでもしたら早いか遅いかの差でしかない、まぁ彼らが肉食のイメージは薄いから大丈夫だと思うが、ゴリラってバナナとかフルーツしか食わないんだよな、墨巣さんに聞いても解らないだろうが今晩辺り聞いてみるか。
「そうね、貴方の幸運なら少しはマシな結果になるでしょうし、悪いんだけど場所を交換しましょう、別にテントはそのままでも構わないから」
なんと言うか、俺の幸運をそんな風に使うとは思ってもみなかったな、普通は宝くじとかの賭け事なんだが悪い結果にならないための保険ね、そんな考え方も有るんだな。
しかしテントはそのままとはどういう意味だ、そのままも何も無いのだが。
「テントは貴方のをそのまま私が使うわ、流石に中の荷物は移してもらうけど」
俺の表情を読み取ったんだろうな、墨巣さんの言葉にようやく言葉を理解する、確かにそっちの方が手間は少なくて済むから有難い、墨巣さんが持つテントは俺のとサイズも同じだし、新しいか数ヵ月使ったかの差でしかない、それでも知らない男の使い回しなんて余り気分は良くないだろうに、本来なら固辞すべきだが申し訳ないが遠慮はしない。
何よりテントを動かすとなるとかなりの手間だしな、時間的には問題ないが体力面を考えるとやりたい作業では無かったから渡りに船でもある、そそくさとテントを取り出してテキパキと組み立てて杭を打ち付けロープを張る、30分でテントの出来上がりだ。




