認証
本当にこれ、個人が持って良いのかね、余りにもでかいし異形だ、燃料とかエンジン、いやモーターか、どうなってるんだろうか。
とりあえず段ボールを抱え込んだ腕のロックを段ボールに張り付けられた絵付きの解説書に則って外し、慎重に本体を持ち上げて段ボールから離れた位置に置く。
さて、とりあえずあちらは放置だ、先ずは段ボールに入っているだろう個人認証の何かを使うとしよう。
「とりあえず開けて、中の確認を頼むよ、無いとは思うけど最上部に肌着がある可能性もゼロじゃない以上、俺はそれを触れないから」
そう言いながら俺が持ち込んだ物と比べて随分と縦長な段ボールを示す、まぁ本体に取り付ける関係で横幅は決まっているだろうから必然的に縦に伸ばすしかないのだが。
ごそごそと段ボールを開ける墨巣さんを視界に入れないようにしつつ、ドローンを注視する、何度見てもでかいしなんと言うかゴチャゴチャしている、プロペラ同士が接触しないようにだろうが上下の差が付いていたり、本体から延びるプロペラを支える支柱も長さが異なる、よくこれでバランスが取れて、しかも祖父の言うようなスペックが出せるなと感心してしまう。
「有ったわよ」
そう告げる声に振り替えれば段ボールを閉める後ろ姿と、足元に置かれたクリアケースが目に入る。
とりあえずクリアケースを開けると留め具付きのコピー用紙が数枚に番号の降られた小箱が幾つか並んでいた、サイズも形もバラバラだな。
「ふむ、一番は声紋認証用の録音機が入ってるらしい、名前と生年月日を吹き込めって」
そう告げれば墨巣さんは一番のポーチを開いてペン型のボイスレコーダーを操作している、まぁ大学生の必需品みたいなものだし書かれた操作方法は無駄だよな。
「墨巣麻理、2276年9月23日産まれ」
予期せずして誕生日を知った訳だが誕生日プレゼントとか渡せないぞ、用意すらできそうにない。
「二番は掌紋指紋静脈認証だと、機械の上に右手を置いて赤いボタンをプッシュだそうだ」
特に何かに触れる事なく、淡々と作業を進めるべくメモ用紙を読み上げるマシーンとなる、突っこみ所は有るがそこに触れると長くなりそうだし、何より突っ込む相手は海の向こうだ、ここで叫んでも届かないし墨巣さんに向けての八つ当たりになりかねない。
「お次は血液検査だな、中に入ってるアルコール綿で指先を拭いて適当に針を刺し、付属の綿棒に塗りつければ良いらしい」




