旧家
「この生活を満了した時の賞品の一つでな、奨学金は月毎に割賦払いだが最大八割、仕事の口利きとバイクを新車でってのが賞品だったんだが、バイクは諦める事になった、一応アメリカン、正確に言うとジャメリカンバイクを狙ってた」
「因みに賞品の総額は2000万強から1200万にランクダウンしたが、お陰で米が食えそうだ」
追加でフォローも入れる、自分のせいでなんて思われたら困る、変に気を使われるのは好まない、俺からしたら全てが普通にやってたら十年単位で片付ける問題が数年単位に減るのだから文句はでない。
「アメリカンとかジャメリカンとか言われても解らないんだけど?」
あぁ、まぁ確かに興味がないとバイクなんてどれも同じだよな、それこそ原付との違いすら知らないのだろう、俺もモーターボートとクルーザーの違いなんて知らない、どちらも船だ、だが知る者ならその二つは大きく違う筈だ。
「解りやすく言うと、バイクって形によってスクーターとかオフロードとかが有るんだけど、アメリカンタイプは乗りやすさっていうか長距離向きのイメージかな、映画とかでジーンズに革ジャン羽織った髭面のタフガイが荒野を走ってるイメージの奴がアメリカンタイプ」
「それを真似て日本の製造され進化してきた国産車がジャメリカンバイク、アメリカ人と日本人とじゃ体の作りとか気候とかも違うから今じゃ違う種類だな、それこそゴリラと人間の差くらいにはかけ離れてるよ」
さて、これで通じただろうか、写真とか見たら一発なんだがな、イメージで伝えるしかないしイメージしてもらうしかない、地面に絵を書こうにも俺では謎の乗り物にしかならない。
「まぁなんとなくはイメージできるけど、たぶん違うんでしょうね、後幾つか気になってる事、聞いても良いかしら?」
そんな問いに、竹を鋸で切り分けつつ
「あぁ、構わないよ、ただ見ての通りだから多少レスポンスは悪いけど」
そう断って作業を続ける、昼までにパーツの切り出しくらいは済ませたいな。
「じゃあ聞きたいんだけど、貴方の言う天運? それってどうやって見分けるの? 貴方の家系は全員が普通に運は良いんでしょ」
あぁ、まぁそうだな、確かに突っこみ所としては最大だろう、非常にややこしいのだが説明できるかね。
「あー、まず前提として一族でも男、それも三男くらいまでが幸運で、天運持ちは長男にしか現れないんだ、いわゆる本家の直系ばかりが天運を持つ、断裂した事がないから解らないけど、たぶんその場合は分家に生まれるんじゃないかな? もしかしたら絶えるかもしれないけど」
とりあえず大前提からだ、我が家に生れた女性は全員が普通の人と変わらない運しか持ってないらしい、直近が曾祖父の姉だから俺は全く実感は無いのだが、後少なくとも六代くらい前までは兄弟の数も少ないから三男とかもいない、俺の知ってる範囲だと確か九代くらい前に別れた次男筋の家系が町内に住んでいた筈だが、親戚というよりはご町内の他人としか認識していない、親等で言うとどれだけ離れるんだろうな。




