裏事情
「その辺りのすり合わせも終わっとるよ、とりあえず3ヶ月置きに物資を運ぶ替わりに報酬のカットをする、我が家の土地管理の側面もあるから仕方なく手助けをする、と表向きには伝える事にしているし、土地管理もかなり薄くはあるが事実でもある、何より調べようにも絶海の孤島で近付こうにも周辺海域含めて我が家の土地で上陸しようものなら即座にお縄だ、マスコミも正面切って喧嘩はしないだろうよ」
「まぁ、三流の記者なら後先考えずにスマイリーの件と合わせて突貫取材に出るかもしれんが、既に手を打ってある、それより報酬について話し合うとしよう」
あぁ、オカシイとは思っていたんだが成る程な、いくらなんでも唐突過ぎた、例え無人島サバイバル物を祖父が読んだとして、感銘を受けたとして、そこからどうなれば無職の孫を無人島にぶちこむという結論に至るのか、ずっと謎だったんだが、成る程ついでというわけか。
確かに土地の管理を怠り、他人に不法でも占有されれば泣き寝入りするしかないのが現行法だ、相場で買って貰えれば御の字で、大抵はそのまま占有され、気付いた時には管理の怠慢を理由に安く買い叩かれるし、警察も動いてくれない、実際我が家一帯で土地を貸している人も50年から100年置きに契約を新たに切り替えているし、何より裏世界の住人達を住ませる代償に色々と手を使っている。
だがそれは岐阜県内に限った話で何ヵ所かにある所有地に関しては疎かで過去に何度か痛い目を見ているらしい、特に今回は島一つだ、周辺海域を含めればその価値は計り知れない、残念ながら変な連中も悪い連中も枚挙に暇はない、付け込まれる隙を与えないためには一族の人間が島に居住した実績が要るが我が家が買って以来、調査はしても住んではいない、買って数十年そろそろ大義名分が切れる頃合いだ。
俺が数ヵ月でも住んだ事で向こう数十年は安泰でその間に売り払う手もある、まぁこんな事を言い出すと買ってから200年程放置された月の土地とかどうなるんだろうな。
あの土地を運用するには軌道エレベーターが開通するのを待つしかない、と言うかエレベーターが開通して月がテラフォーミングされるのを待つしかない、おそらく俺の曾孫の世代でもまだ足りなそうだが。
「で、報酬の交渉って言っても何処までの支援が有るかにもよるんじゃないかな? 送る荷物の量と種類によるけど奨学金2割マイナスって所だと思うけど」
とりあえず牽制からだ、3ヶ月置きとなると量次第ではもう一声上がるだろうが最低ラインの保持を狙う。
「量と種類に関してはおおよそ十キロ強、食糧が基本だが、一回目は食糧というよりは調味料と米だな、その後も基本は米になる、一回目はピストン輸送で数日内二回目は9月、三回目は12月の三度となる」
と祖父の出した条件は正直に言って過剰な物でしかない、流石にピストン輸送はやり過ぎだと思うのだがその辺りはどう理論付けるつもりなのだろうか。
とまれ、困った事に出してきた条件に対してこちらのコインは不足している、交渉に着くにはもう少し切り売りしてコインを用意するしかないな、いやまぁ頻度を減らせば良いだけの話なのだが減らしたところでテーブルに着けないくらいには足りていない。




