教導
さて、1日のお休みを置いての漂着物はほぼ変わらずのゴミの山だ、昨日は風が強かったとかでもないから流されたり流れ着いたりが少ない筈で、目に見えた差違は有る筈もないのだが。
さて、ロープと釣り糸がどれだけ手に入るかな、できれば昨日の遅れが取り戻せる大量であってほしい。
「とりあえずロープと釣り糸をこの中から探すんだけど手伝うなら怪我の危険性をしっかり理解して注意してね」
少し上から目線かな、しかし言葉を引っ込める事はできないし切り替えていこう、少なくとも今は目の前の事に集中で良い。
墨巣さんの手伝いも有って昼までにそこそこの量が集まる、やはり人数が増えると違うなと今更ながらに感じ入る。
さて一言断ってトイレを済まし、川で手を洗い、そのまま拠点に戻る、本日も焼魚と焼き貝の昼食だが、少し変わるのは教えるという工程が加わるという点だな。
「えーっと、先ずは薪の用意、ここに積まれた中から乾燥したヤツから適当に選ぶんだけど、細いものと太いものを慣れるまではバランス良く、後は木の皮とぼろ切れなんかを用意して空気の通りを考えて組む」
一つ一つ説明しながら実際にやってみせる、或いは明日俺が倒れても一人で最低限の食事と暖を取れるようにはしないといけないから、ここはふざけられない。
「で、このファイアスターターって言うんだけど、これを削って後は一気に擦って火花を散らして焚付けになる布や解した木の皮に着火、燻りがしっかりした火になったら焚に入れて慎重に空気を供給してあげれば」
この通りと燃え盛る焚き火を両手で示す、俺も始めに比べれば手慣れたなと改めて感心する、いつの間にか誰かに成功例を見せられるまでに着火を習得していたんだな。
さて、続いて魚の捌き方から教えていこう。
「さて、お次は魚の処理だ、先ずは腹を裂いて内臓を出して中を洗って串うち、大きい魚なら鱗とりをして火の通りを考えてバツ印を入れて焚き火が燃え尽きた後の石の上で焼く」
本当なら塩も振りたいのだが持ってきてないんだよな、素材の味だけでも凄く美味しいからとでも誤魔化すのもアリだが本拠地に戻れば調味料は少ないが普通に有るし、とりあえず聞かれたら謝る以外の選択肢がないな。
いい感じの焼け具合いとなった小魚を分け、サザエを食べ、燃え尽きた後の石で墨巣さんの捕ったアジを焼く、サイズ的にこのままだと半生よりやや焼け気味という判断に困る焼け具合いにしかならないのだが並べた石の周りで円形に薪を組んでしっかり焼く、少し以上に焦げるが表面を取り除けば半生よりは食欲を減退させないし、安全だ。
満足のいく食事を終えて、少し腹を休めるために釣り糸解しを始める、少しずつ時間を見てはやっているのだが全く終わらないし進まない。
本拠地に移動した後も電話が掛かって来るまではこの作業で時間を潰すとしようか。




