昼の作業
拠点に戻り、火を起こす、四度目ともなれば慣れたもので一度で火が燃え盛る、いつものように串刺しの魚を焼きつつ蛸のヌメりを取り、パパッと炒めれば食事の完成だ。
今日の蛸はそこそこ大物だし、腹も膨れる事は間違いない。
さて、昼食で久しぶりに腹もいっぱいになった事だし、食休みも兼ねて簡単な作業に入ろう、まずは焚き火の周囲に石を設置して高さを調整する。大まかな調整を済ましたら所でバラしたフェンスの部品を置いて具合を確認する、鉄の板に楕円の水玉模様状の穴が幾つも空いているという、元は工事現場なんかのフェンスだったのであろう物は、金網の替わりになるかもしれない、流石に魚を乗せて網焼きは錆具合からして危険だが、貝を乗っけたりする分には問題無いだろう。
それほど重くないし運ぶのも取り外しも簡易で、焚き付けの邪魔にもならない。
この真価は夕食の時に見るとして、お次は錆びて歪んだフライパンだ、歪んだから捨てられたのか、捨てられたために歪んだのか、さてどちらだろうか、どちらにせよ今は調理器具にならない。
だからと言ってスコップにしようなんて考えた俺も俺だが。
さて、試しとばかりに泉にフライパンを突っ込み、地面を掻く、ガリガリとした感覚が簡単に外れそうで頼りない柄から伝わり、水の抵抗を力で黙らせて引き上げれば砂利やら土やらがフライパンの縁でしっかりと採れた。
地面を棒でほぐさずに掘った事を考えれば、手を突っ込んで掘るより楽に、多量に土を掻き出せる。実用に耐えるスコップが仲間入りした、見た目はフライパンだけど。
まだ日は高いし、二度目の干潮のピークまでやや時間はあるだろうし、今の間に薪の確保だな。
払った木の枝や倒された木の薪が多少は有るが、そこそこの備蓄を作って明日には本格的な探索に入りたい、昼食後の数時間とはいえ歩き回るには充分だし、そろそろ山菜が欲しい。
約2時間を薪の確保に充てて、拠点回りの木々が疎らに減り、木の天井もレースのカーテンくらいにまでレベルダウンした所で作業を切り上げ、そそくさと海へと歩みを進める。
しかし一人でいると一人言が増えるなんて言うが、俺の場合は頭の中での自問自答が多いらしい。思い返せば目移り多く、カオスな思考で物事を把握し分析した物だと嘆息するしかない、するしかないが変えようもない、誰かがいないと会話もできないしな。




