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重厚

 重いなぁ、ちょっとした海難事故と思っていたらまさかの殺人事件、それも両親による物とか、予想外にも程がありものすごく空気が重い。

 殴られたらしいけど怪我はないのかとか、火事場の馬鹿力だろうけどよく泳ぎ着けたなとか、色々と突っ込み所は多いのだが、何よりも重いなぁ。

さて、これはかなり切羽詰まった、と言うかかなり重大な問題になってしまったな、対応を一つ間違えると余計に問題が大きくなり首が回らなくなりそうだ。

ただ幸いにして動くのは俺じゃなくて祖父だ、俺は救助がくるまでの保護だけ、その後は親父と祖父にパスして終わる、墨巣さんには悪いがその先は知ったこっちゃない、と言うか大学卒業したばかりの俺の能力を越えていてどうしようもないのだ。


 「まず、殴られたと言っていたが怪我はないかな? 差し支えなければ健太に見てもらってくれ、応急処置くらいは仕込んである」

そう告げたのは親父だった、やはり医者としてはそこが気になるんだろうな、それ以外に関しては余り精力的に動くようなタイプじゃないだろうし、いや影が薄くてどんなタイプかも掴みきれてないからもしかしたら駆けずり回ってくれるかもしれないのだが。

「殴られるより早く飛び込んだので然ほど強く殴られた訳ではないので」


 淡々とした語り口が痛々しく重い、声を掛けようがない、何を言ってもうすら寒くなるだけで、憐れみも悲しみも共感もただの薄くて脆い言葉にしかならないだろう。

 「ふむ、率直に言って予想外だな、対応も変わってくるし、申し訳ないが根回しと情報収集に夕方くらいまでは掛かる、以後の予定については今晩の、そうだな7時くらいに連絡するからそれまで待っていてくれないかね? こちらとしては機先を制したい所だが間違いなく後手に回っている、残念ながら今すぐ救助とはいかなくなった」

祖父の言葉から巻き込まれている現状の加速を理解する、最終的には収まる所に収まるだろうが時間が掛かると言外に言っていて、俺はその事についてあまり力になれそうにないが、少なくとも数時間の保護はやれと、そういう事になるのだろうな。


 「解った、とりあえず充電もヤバイから切るね」

そう一方的に告げて電源をオフにし、ソケットに差し込んで日当たりのいい場所に放置する、とりあえず夕方までもう少し時間はあるし完全回復とまではいかないだろうが協議中に電池切れなんて事にはならないだろう。


 さて、ここからどうするべきかね、とりあえず墨巣さんには休んで貰うとして、俺は俺の方で動きたいのだが、ゴリラとか鹿の問題もあるしあまり離れて行動したくはない、それにできるなら本拠地の方に移動したいというのもある。

 ほんの数キロくらいだがゴリラの縄張りからは離れる事になるだろうし、見られた事で興味を持たれていたとしても少しは気休めになる。

とは言え、数時間も海を漂い泳ぎ着けた墨巣さんに歩いて貰うわけにもいかないし、何より救助が船だとしたら此方の方が移動の手間が掛からない。


 となると、ここはお話しでもしながら時間を潰して夕方に無理を言って漁に出かけ、そのまま夜の電話という流れが妥当だろう。

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