状況説明
どうやら質問すらできないようなので予定通り畳み掛けさせていただくとしよう。
「ここは俺の拠点の一つで本拠地は別にある、んで、なぜ俺がこんな所に一人で居たのかってのを一言で言うと、就活失敗したらサバイバルってところか……まぁこの生活自体が就活だったりするしその辺りの説明は今度にしてくれ、今からそっちの事情を俺と祖父の前で話して貰うことになる」
「まぁ言いたく無い事とかは無理に言わないで良いけど正直に話した方が後がややこしくなくて良い、どっちにしてもこの島から出るには祖父の助けは必須だし、その後の面倒事とかも此方が処理しないといけない訳だからなるべく話してくれ、当然秘密は厳守できるし俺に至っては話す相手もいない」
興が乗ってくると茶化すのは俺の悪癖の一つだな、流石にそんな空気じゃないと反省し後悔しても遅い、彼女の反応次第だが一発殴られるくらいの覚悟は決めておこう。
正直に言って情報過多も過多、よりにもよって何故こんな所に漂着してしまったのやら、まぁよりにもよってな一族に保護される訳だから事情次第じゃあ幸運とも言えるが、単純に事故っただけだろうし祖父が東奔西走して三面六臂の活躍をし手腕を振るうような事にはならないだろう。
まだ現実に打ちのめされて思考回路が復帰できていないらしい墨巣さんを放置してリュックから電話を取り出して電源を入れる、まずは漂着とゴリラ、それに鹿と虫の知らせの報告と説明からになるか……頭おかしくなったと思われるんだろうな、俺ならそう思うだろうし。
ボタンをプッシュしてコールする、さて誰が出るかは解らないがかなり忙しくしているだろうからすぐには出ないだろうという予想を裏切り二度目のコールで繋がる。
「はいもしもし高田ですが」
電話の向こうから聞こえてきたのは祖父の声と音楽、祖父が仕事中に聞き流すBGMとして掛けたのだろうソレは、祖父が最も好きなバンドの名曲である。
19世紀後半に作られたその曲は数世紀を経た今もCM等に起用される名曲で祖父曰く『世界一カッコいい四拍子』
俺が子供の頃からのヘビーローテーションは今もなお現役らしい。
とりあえず言える事は仕事中っぽいし、機嫌が最悪になりそうだという事だろう、すでに応対が刺々しいし電話では祖父の不機嫌、目の前では墨巣さんのなんとも言えない雰囲気の板挟み、胃が痛くなりそうだな。
「健太だけどややこしすぎてちょっといっぱいいっぱいだがら刺々しさは引っ込めて欲しいんだけど」
色々と伝えたい事も協議したい事もあるがまずは限界を越えそうな俺のキャパを保つためにそんな願いから始めた。




