朝の作業
翌朝、南国とはいえ四月も序盤だと地味に冷える、真冬のような暴力的な寒さではないだけマシだが。これが夏になれば寝袋で蒸されて大変な事になるのだろう。
本日の予定は、漂着物の中から使えそうな物を集める、食料確保、薪の確保の3つである。
目標としてはスコップ替わりの物に塩を作る用の鍋、金網と水の運搬用のバケツかポリタンクを拾い、食料は魚と貝、可能なら山菜か木の実、この辺りであろう。
今日も今日とて獣道よりはマシになってきた森の通路を抜けてまずは磯に行く、時間を逃せば磯は海の底に隠れ、本日の昼御飯は水のみ、なんて悲しい事になりかねない。
いつもの様に潮溜まりから鍋で水を掻き出し、隠れている魚や蛸がいないか探す、岩にへばり着いてる牡蠣やらを取るのも手だが残念な事に道具がない、アーミーナイフでなんとかできるだろうが予備が無い以上、無茶な使い方はできないし斧を使えば指を切り落とす未来が見える。
漁のための道具も拾えれば良いのだが等と脳内にメモを刻みつつ、蛸と魚という組合わせを手にした、なお今回は腹に入れば同じという事で蛸の胴と足を切り離しておく、何度も脱走の面倒を見たくないし、今日はこのあとに漂着物拾いがあるのだ、無駄な時間は使いたくない。
一度拠点に戻り、魚と蛸が入った鍋をテントの中に入れ、再度通路を海側に抜けて、上陸地点を目指して歩き出す。
漂着物の多い地帯に来てみれば、相変わらず雑多な物が複雑に絡み合いながら乱雑に積まれたように転がっていた。
ロープに漁用のブイ、プラスチック片にガラス瓶、空き缶に布の切れ端と『よくもここまで』とばかりにカオスな顔ぶれが揃っていた、一部は壊れ、一部はキレイで、一部は一見では判別不能なくらいに汚れている。
そんなゴミしかないと胸を張って言えそうな物の中でも、まだ使いようによっては輝けそうな物も眠っている。
例えば錆びて歪んだフライパン、こいつはスコップの替わりになってくれる筈だ。
例えば半分に割れたポリタンクのような物、これは荷物を運ぶための篭替わりになる。
例えば錆びたフェンス、こいつは調理機具に変わるかもしれない。
フェンスをバラして支柱を外し、さらに上部の拳が通るくらいに目の大きな金網も外して下部の板だけにする、板と言っても水玉模様的に穴の空いた板だが。
目についた物たちを抱えて森の中を進む、拠点に戻ったら少し遅い昼食と作業が待っている。




