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邂逅3

 鋸を回収して先行してみる、さて素直に就くて来てくれるかだな、最悪の場合は竹杖はともかくとして水筒を失う事にしかならない。

 ただ流石に持ち逃げとかはしないだろうと信じている、何せ彼女には土地勘はないし、此処が島という事すら知らず、水の在りかも安全な場所も知らないのだ、俺が信用できなくても人の気配がある建造物が現れるまでは大人しく付いてくるだろうと予想ではなく確信で言える。

そして彼女にとっては残念ながらこの島に人工的な物が在るとしたらそれは全て俺が作った物で、道も建造物もどれだけ辿ろうと、どれだけ叫ぼうと辿り着くのは俺一人でしかない、逆を言うと俺も下手に敵意を与えて怪我でもしたら救いは生活を切り上げての救助しかない、慎重に行こう。


 今の拠点まで早足でほんの10分足らず、海岸線を3分強と森を7分くらい、泳ぎ着いて疲れているだろう彼女に合わせてゆっくり進む中、もう少しで森の入口という所でまたガサガサと木々が揺れた。

 また鹿か、おそらく先程の奴なんだろうなとそちらを注視する、大した事はない、せいぜいが鹿であるいは狸、だが一応確認しよう。

そんな惰性で森の中を、木々の隙間を覗き見た。


 でかいな、それが第一印象だ、黒々とした毛並みにかなりの巨体、おそらく体重300キロは越えているだろうと一目で解る。

 巨大な黒い影、俺の脳がまず理解したのはソレで、その先を理解したくはない。

黒い影が振り向き、目が合った


「ハハッ」もはや乾いた笑い声しか出ない。

 アレか、これはナニか、少女と出会ったら物語りが急転直下に動き出すボーイミーツガールか、フザケンナ。

主人公体質だの、この世界はお話の中だの、そんな痛い妄想は中二時代だけで十分だ、後遺症として地味な思考の汚染は受けているが、そんなものはクソ食らえ、こんな事をしやがったのは何処のどいつだ、なんだこの状況は、なんだこの光景は。


 フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ、フザケルナ

 クソったれが、フザケルナ。




「ねぇ、あれ……ゴリラよね」


 そんなコワゴワと、戦々恐々と震え声でか細い質問でまだ見ぬ誰かへの呪詛を止め現実に帰還する。


 ゴリラだ、立派なゴリラ、ジッとこちらを見詰める優しい瞳のゴリラ、背中の白い大人のゴリラ。

何度も目を瞑り、何度も目を擦り、何度も目を開けて、皿のように見開いて視認して、頭を少し叩いてみたり頬をつねったり、ありとあらゆる現実逃避と夢なら覚めよという淡い希望を叩き壊して、ただそこに居る。


そんなゴリラだった。


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