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平和的に

 反応はないがとりあえず刺激しないようにゆっくりとリュックを下ろし、手元が見えるようにしながら慎重にリュックを開く。

 彼女からしたら俺は竹杖持っててその上斧と鋸を携帯する危険人物だしな、とにかく刺激しないように、かつ彼女から目線を外さないように慎重にタオルとシャツを取り出し、投げ渡そうかとも思ったが念のためその場に置いて数歩下がって反応を見る。


 なんだろうな、野生の動物を相手にしている気分だ、それも肉食の大形生物、あるいは新種生物。

 おおよそ三メートルくらい離れたところで、尖った竹杖の先で俺を牽制しながら近付いてくる、これは武装解除もした方がいい気もするが彼女の立ち姿は完全に武道を納めた者のソレだ、しかも心得がない俺でさえ今まで知り合った中でも飛び切りの達人と一目で解る佇まいは『凛とした』という形容詞が実に似合う鋭さを持っている。

武装解除した瞬間にブッ飛ばされそうで二の足しか踏めないな、とりあえず出方を待って少しずつ警戒を解いて貰うしかないだろう、幸いにして相手も日本人で言葉は通じるしな。


 ゆっくりとタオルに近付いていく姿を見てとりあえず最低限の会話はできそうだなと好意的に判断して、さて何から話すべきか考えたいが流石に同じ轍を踏んでの失敗はしたくない、気を抜いた瞬間に今度は命を盗られていたとか笑い話しにもなりやしない。

 一先ずはここの位置とかを説明して様子を見ようと決める間に体を吹き終えた彼女は一瞬だけ躊躇して濡れたシャツの上から俺の予備のシャツを着込む、その間中咳き込んでいるのは海水を飲んだからかもしくは風邪にでもなったか、先に水分補給をした方が良さそうだな。

リュックから取り出した水筒をその場に置いて更に下がる、なんか餌付けとかしてる風だがそんな牧歌的な空気は一切なくピリピリした緊張感が辺りを支配している。


 本当になんだろうなこの状況、理不尽が過ぎるし何より少しばかりアホらしくなってきた、打ち解けた訳ではないが流石にいきなり襲い掛かってきたりはしないだろうと信じて、もうちょっとだけ穏和な雰囲気を醸し出してみるか。

 「さっき言ったように俺に危害を加えようなんて気持ちは少しもないし、出来ればこんな面倒な手順は省きたい事情もある、無警戒になれとは言わないからせめてその武器を下ろして欲しい」

 「もちろんこちらも斧と鋸を置くし、対話と行こう」


 一息を入れつつの言葉をどう受け取ったかはともかくとして、慎重に斧と鋸をホルスターから取り出し、そのままゆっくりと地面に置く、仮に走り掛かってきたとしても距離は10メートル程、足場も悪いし斧くらいなら拾って対応できるであろう距離。


 

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