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漂着

 ゴミの仕分けを進める中、いきなり唐突にあるいは突然に、もしくは不意にきな臭さが消える、臭い物に蓋をしたかのように消臭剤をぶちまけたかのようにキレイさっぱり消えて無くなる。

 咄嗟にゴミの山から離れて見構える、地震か火山か隕石か、何処から何が飛び出るか解らない、さぁ鬼でも蛇でもやって来いだ。

そのまま数分、地面の揺れも無ければ空が真っ暗に染まったり逆に明るくなる事もなく、何かが降ってきたり風が強くなったりする事もない、これは一体全体どうしたことだ、今までの経験から言ってあり得ない、確かに不確かな物が根拠では有ったがあの感覚を覚えておいて何も起こらないとは考えにくい。


 となると実家の方で何かが起こったと考えるべきだろう、とは言え今すぐ連絡しては邪魔になる可能性もあるし、一先ずは向こうからの連絡を待つとして寝る前までに無ければ確認するとしよう。

 なんとなくスカされた気分だがやるべき事をやるだけだ、ゴミの山を切り崩しながら必要な物を選別していく、大量のゴミとほんの少しの必要な物。

かなり集まったような気もするがまだまだ欲しい、人の欲というか俺の野望に限界はないかもしれない、と言うか正確には有るだけ欲しいというだけかもしれないが。


 焼き干しメインの昼食を終えて再度漂着物を拾うべく歩き出す、しかしどうしようか、きな臭さが消えた以上多少の無茶が可能になりそれこそ一度本拠地に戻って荷物の一部を移すのもアリとなった。

 とは言え予定通りに進めたいし、ここは堪えるとしよう。


 のんびりと海岸線を歩いて、さぁもう少しで漂着物の山だというところで、海辺に動く影を見付けた。

 アザラシか何かであるはずのその影はゆっくりと波を乗り越えて浜辺を歩くと波打ち際から離れた位置でバタリと倒れた。

俺の目を信じるなら残念ながらと言うべきか驚く事にと言うべきか、それは人間でそれも女の子である、約50メートルの距離が離れてはいるがそこまで視力は悪くないしほぼ間違いない。




 さて、一先ず頭を落ち着けつつ状況を把握するために位置の復習だ。


 中学の頃に親父に教えて貰ったのは、確か北緯30度、東経135度の交わる点より右上に数ミリ、ただしこれは地図の上で説明されたため正しくは北東方向、縮尺は覚えていないが数十~百キロ後半って所だろう。

 親父によれば当時、空白地帯だった排他的経済水域を大きく埋める位置にでき、黒潮に近く豊富な漁場と、言わば神がかかり的な立地に産まれた島。

 それが大中火島で、一番近い陸地と言えば鳥島か紀伊半島か種子島で距離で言えば二百キロ以上は離れている。俺の目玉と脳がこのサバイバルでぶっ壊れていないなら彼女は間違いなく泳ぎ着いている。仮に船が沈没したとかなら救命ボートでたどり着くだろうし、万が一の可能性で救命ボートも使えなかったとして救命胴衣くらいは着ける筈だし、何より民間の輸送船や漁船でも人数分の胴衣を用意しなければ出港はできないとここに来る船で聞いた。

仮に漁船でも作業中の着衣が、客船なら避難時に船員による案内が義務付けられている筈だ。


 となれば残るのは個人所有のクルーザーで胴衣を着けずに海に泳ぎに出て、何らかの事故にあったという可能性だろう、何にしても泳ぎ着いてすぐさま気を失う程度には泳いだと見える、火事場の馬鹿力を出したとしても一般人なら20キロが限界だろうから1時間やそこらではない筈だ。


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