夕食
とりあえず今からの目標は食えそうな物の確保、海水から塩を作るのはもう少し余裕ができてからで良い。
今のところ保存容器の目処も立っていないし、そもそも皿すらなく串刺しにかぶり付き中華鍋から直接食べるという野性味溢れるスタイルである、もう少し近代に近付けたいが荷物が増えると拠点を移すのも面倒になるため痛し痒しでもある。
多少は整備していてもあの水場じゃあ物足りないし、海の恵みは獲れるが腹を満たすには届かず、何より絶望的に野菜が足りていない。
ある程度の潮が退いたので磯をアチコチ歩き回りながら貝や魚を捕まえていく、最低限を獲た所で催したため海で済まし、そのまま拠点に戻る事にした。
サバイバルの本だと穴を掘って済ますんだが、スコップ替わりが無い以上、しばらくは母なる海が俺のトイレとなるだろう、濡れるしべとつくが下手に穴を掘るより早いしな。
島が東西に長くて良かった、これが南北だと山蔭に隠れてとっくに夕日の灯りは消えているところだ、まぁ暗いのは確かなので事前に張っておいたザイルを頼りに何度も往復した道を行く。
しばらくして拠点に戻り、早速ばかりに火起こし、拾ったサザエを焼きながら魚に串打ちし、明日の分の水を浄水器で濾過しながら水筒に容れておく。
焼き上がった魚にかぶり付く、本日はよくわからない魚だ、見た目からしてハゼの仲間だろう、たったの二匹じゃ食べた気がしないが食べられるだけマシと思わないといけない、坊主の日や雨の日もあるだろうからこの程度で凹んではいられない。
それにまだ貝類は残っているし昨日よりはマシだろう。
今日も今日とてやる事も無ければやれる事もないため早々に焚き火の始末をしてテントに入る、今更ながらコレ、かなりアクティブな引きこもりなんじゃなかろうか、強制されてるから引きこもりとは呼ばないかもしれないが。
そもそも規模が違う気もする、どれだけ気合いが入れば無人島に引きこもる事になるのだろう、人間嫌いを極めすぎである、いずれにしても当事者は俺のため何と言うべきか解らない。
そそくさと歯を磨いて、着替えて暗闇の中下着を水洗いして適当な木に干してから、寝袋に体を納める。
睡魔よ早く来いという心持ちで空腹をお供に夜を過ごすとしよう。




