昼食
小腹を満たす程度の慎ましやかな食事を終え、水場の改造作業に戻る。
食事を済ます数分で少しばかり浮いた泥が流れ出るなり沈澱するなりして、澄んだとは言えないまでも底が見通せるようにはなっていた。
現時点では元水溜まりの半分くらいが窪みとなり、残る半分も木の枝で穴を空けている、少しずつ土を掻き出しては窪みを拡げ、とりあえず深さ7センチ直径20センチくらいにまでは拡がった。
水の湧き出る量は雨が降らない限りは変わらないが、溜まる量はかなり違うし、当然ながら汲める量も変わってくる。
今はまだ濁っているし水位も減ったがしばらく間を置けば前よりマシな水場になってくれるだろう。さてさて、ついでに土の検分といこうか。
掻き出した土を見るに腐葉土と土の中間より土寄りって感じだな、単純に木の葉が底にたまっていただけかもしれないが、腐葉土なら保水性と吸水性が高い筈だし、こんなか細い小川なんて余裕で呑み込んで消え去る筈だ。まぁこの地面の下は固まった溶岩だし、単純に地形的な問題で吸収しきれないだけかもしれないが。
最後の悪あがきと脱走を試みた蛸をそろそろ仕止めたいのだが、蛸の締めかたなんて知らない、下処理はできるし調理も余裕なんだがな。
さて、水が溜まり汚れが消えた窪みから鍋で水を汲み出し、ようやくとばかりに蛸のヌメりを水洗いしていく、理想をいえば塩でもみ洗いしたいのだが御中元セットは油とみりんと料理酒とめんつゆと醤油と顆粒の出汁しか入っていない。もう少し落ち着いたら塩作りだな。
何度か水を入れ替えてヌメりを取り、足をぶつ切りに体を一口大に切り分け、油を少しだけ入れた中華鍋で炒める、味付けは醤油オンリーだったが美味しく頂いた。
時間的には正午過ぎくらい、もう少し水場を拡げて周囲を整備し夕方前に二度目の漁といこう。
穴を堀るのに1時間、キャンプ地周辺の枝払いに一時間、ある程度ではあるが太陽の光が射し込みやすくなり、僅かではあるが深くなった泉を成果に、二度目の漁に出る。
やや高い太陽を見ながら、徐々に退いて行っているであろう海を見る、朝方は見えていた磯はまだ波の下、それでも手前の方から少しずつ岩場が顔を出し、そう遠くない内に砂地や潮溜まりも見えてくる筈だ。




