食料調達
磯を歩く場合、理想的な装備としては分厚いゴム長靴に軍手、トングとバケツがあれば言うことはない。
それを踏まえた上で俺の姿は底の厚いアーミーブーツに素手、柄の取れた鍋が二つ、さっき急ぎで枝を削った太い菜箸みたいな物、釣り好きの友人が見たら『海を舐めるな』と怒られる事請け合いだな、蘊蓄として磯釣りの危険性を語っていたくらいだ。なお最も危険だったのは調子に乗ってたら足首まで水が来てて危うく突端に取り残されかけた事らしい。
本日何度目かのさておき、そこそこ拓けたルートを進み海に出て、西側に歩いて数分で磯と言うか岩場というか、そんな地形の場所に到着した。
小さな潮溜まりや、岩場の隙間をチェックしつつ時おり海の様子を確認して水位に気を配りつつ、ウニとか小さい真蛸に食べられそうな小魚とサザエも捕まえて、本日一回目の漁は終了だな、漁っていっても潮溜まりの水を掻き出して残った魚なんかを鍋にインするだけの作業だが。
とりあえず魚は適当な岩に叩きつけて野締めに、蛸は面倒だが鍋から逃げないように注意しながら運ぼう、ウニはその場で頂いたがまぁまぁの味だな、少し時期を外したかもしれない、個体差もあるかもしれないが過度な期待はしないでおこう。
拠点に帰還し、お昼ご飯兼朝御飯にしよう時間的に9〜10時くらいだろうか。まずは火起こしからとなる、昨日の夜に割った薪やら拾い集めてきた枝やらから朝露が少なそうな物を選んで着火、サザエを火の近くに放置しつつ蛸に取り掛かる、魚は串に刺して直火焼きにする、冷蔵庫があるなら夜まで保存できるのだが、無いものねだりは意味がない。
さて、俺の見付けた水場は正直に言って小さい、岩の隙間から染み出るというか流れ出る細い筋が池と言うか水溜まりに溜まり、か細い小河となり海に流れ出る、そんな感じの心許ない水場で、本拠点を見付ける前に多少は改善させた方が良いのだろう。
とりあえず木の枝というショボい道具で水溜まりを掘っていく、掘るというか突き刺してほじくるという方が正しいが。少しずつ地面に傷と言うべきか穴と言うべきかを与え、手で柔らくなった土を掻き出す、何度か行う度に、少しずつ掻き出した土は溜まり、小さな穴は拡がり窪みに変わる。
ある程度の所で岩肌の水で手の泥を落とし、一回目の食事を取る、グツグツしてきたサザエに御中元用の調味料セットに入っていた醤油を垂らし、もうしばらく待つ間に小魚を貪る、今日の魚も鰯かなにかだろう、美味しく食べ尽くし、続いてサザエを菜箸で慎重に火から遠ざけ、中身をクルリと引き摺りだして食べる。残るは何度目かの脱走に失敗しすでに死に体の蛸だけだがヌメりを取らないと料理のしようがないんだよな。




