専門
夕食を終えて満足感に浸りながら微睡みに身を任せる、さぁ明日はいよいよ建設の本番にコーヒー片手の天体観測だ、存分に眠って備えるとしよう。
朝でも若干の蒸し暑さが感じられるようになってきたな、もうじき梅雨も後半に差し掛かるし、そこを越えれば待っているのは暑い夏だ。
ここに来る前に見た長期予測じゃ今年の夏は平均的な気温らしいが何処まで信じていいのやら、2298年にもなっていて、まだまだ翌日の天気すらそう珍しくない確率で外れている、半年先の気温と降雨量をピタリと当てるなんて今世紀中には無理だろう。
ほんの数十年前から建設し始めた宇宙エレベーターがようやく完成するらしいがそれも来年の秋、そこから新たな気象衛星やらを射出したとしてデータの解析を考えればやはり年単位での実績が必要となる、受信してからの予測と乱数要素の計測はパソコンでできても出力側の衛星の補正値を調整するのは実地試験をしてからだ、どう頑張っても来世紀になるな。
この辺りは専門ではないが人よりは詳しい宇宙関連のソフトもハードも今最も熱い産業でコンテンツだ、経済学と経営学を学んだ俺からすれば知っていないと舐められる分野となる。
まぁそれだけの知識が有っても就職活動は失敗したし、現時点では一銭も稼げていないのだが。
いや現時点でギブアップしたとしても2ヶ月分、約1000万円残る奨学金の内六分の一に相当する、えーと166万円を稼いだ事になるのか、月に80万近くとかかなりの高給取りだな、しかも満期ならボーナスで更に倍となる、ただし現金じゃなくて現物支給のバイクだが。
まぁそれも遠い未来、正確には約10ヵ月後の事になる、この2ヶ月の経験からイレギュラーさえ起こらなければ問題なく過ごせそうだ。
ただどうなんだろう、今の時点でイレギュラー真っ最中みたいなものでこれ以上となると隕石が降ってきてそこから異星人襲来とかゾンビウィルス発生とかの非日常をぶっちぎるフィクションの世界となる。
思考をどれだけ巡らせて、何処までも迷子を突き進んでいても染み付いた動きが朝の漁を済ませてくれる、緊張感とかもはや空の彼方に消え去ったらしい。
とまれ、流石にここからは集中と緊張感はマックスにしないと怪我では済まない、体力も気合いも存分に建築現場に向かうとしよう。
念のために穴をチェックしてみるが問題はなさそうだな、太い竹を担いで目標に向けて突き立て足で土を被せて軽く固定していく。
ある程度まで埋めて固め、脚立を足元にセットしロープで梁と固定していく、後はしっかり埋め戻して踏み固める、これで一つ終わり、残る時間からもう一本が限界だな。




