3つめ
竹を運び込み、さてお次は穴堀り作業だ、今日中に穴を堀り終わるのは無理だが半分くらい迄はいける筈だ。
少し掘ってはフライパンにまとわりついた土を剥がし、また少し掘っては剥がす、遅々として作業は進まず、スタミナだけがガンガン減っていく。
残念ながらスコップやツルハシが流れ着くとは思えないし、これからもフライパンを使い続けるしかないが、もしも有ったらかなり捗るんだがな、それこそ毎回毎回土を手で剥がす迄もなく軽く振るだけで土は剥がれるだろうし、固い地面に根性勝負を挑む必要もなくなる。
だが、どうにも海とスコップとの関連性が潮干狩りくらいで、それも子供が砂場で使うような小さな奴くらいしか流れ着きそうにない、ツルハシなんて夢のまた夢だな。
どちらにしても建築が終わる迄は漂着物のチェックもできないから現状で我慢するしかないのだが、それでも愚痴の一つくらいは溢しても良いだろう。
さて休憩がてら運んだ端材で作業台となる櫓でも組んでしまおう、これで3つになり、真っ二つに切っても片側は櫓で保持されたままになる、変なところでへし折れる心配がかなり減るな、理想はもう一つ作っての四点で支える事だがそれも近いうちに叶う。
叶ったところで作業効率が極端に上がるという物でもないが余計なスタミナの消費や、慎重になっての低速作業がなくなるから総合的に見ればそこそこの効率化になるはずだ。
ロープと竹で作っただけの物だが満足度は高い、ただ問題は残るロープの分量からして屋根を建築する前に尽きるだろう点だな、まぁ足りなくなったら拾いに行くくらいで良い、それこそ鳴子の設置を後回しにしてしまえば足りるかもしれないしな。
休憩を挟んでまた穴を堀り、途中で切り上げて川で手を洗い水を補給する、もう夕方だというのに随分と暑い、昼間も暑いとは思っていたが流石に夕方にはマシになるだろうと踏んでいたんだが外れたらしい、むしろジメジメしてサウナみたいだ。
梅雨時とはいえここは南国、もう夏も近いという事なんだろうな、まぁジメジメは昨日の雨が蒸発したからだろうし、明日にはマシになっている筈だ。
それにアスファルトと違って土なら熱を夜中まで保有する事もないだろうし日が沈めばかなり涼しくなってくれるだろう。
とまれ水も補給できた事だし早々に漁に向かうとしよう、そろそろ潮が引いている頃合いだ。
荷物の大部分を下ろして新たにホースやら鍋やらをリュックに詰め込んで磯に向かう。
今日もまたホースをセットし抜いていく、相変わらず勝手にドンドンど水が出ていく、理科の実験で見たときも思ったが本当に不思議だな、大気圧とか重力とかが関係しているらしいが自然の神秘だ。覚えていて本当に良かったと今更ながら思う、でなければいまだに鍋で頑張って汲み出してただろうしな。




