朝の一幕
暗くなる寸前、手元がうっすらと見えるだけという時に灯った火は周囲を照らし、同時に暖かくなった気がする。流石に酸欠でグロッキーらしい、鍋の中に浮く魚の内蔵をサバイバルキットに入っていた十徳ナイフで取り出し、枝を削った串に刺して直火で焼いていく、味付けは特に無し。素材そのままに僅かに残った海水の塩気のみである。
見た目からして鰯だろう、二匹じゃ少しと言わず物足りないが今日はこれが精一杯、食事も終えて辺りは真っ暗、まだ夜も始まったばかりだがやる事もないし、火を消して寝るとしようか、星を見ても良いのだが、あいにくと空は木の天井が邪魔だし、星座には詳しくない、星空観賞ならもう少し充実した拠点を作ってからで良いだろう。
翌日、チュンチュン鳴く鳥の音を聞いて起きる、朝チュンにしては色気はない、と言うか海鳥なら百歩譲って良いが雀にしか聞こえない鳴き声を持つ鳥よ、お前200キロ近くも良く飛んできたな。
まぁ俺が知らないだけで雀に似た鳴き声を持つ休憩中か住み着いた旅鳥ってオチだろう、雀みたいな鳴き声を持つ海鳥って可能性もあるが。
さて、空腹が気になるが動くとしよう、寝袋から体を出し、今日も今日とて荷物を選別し、コンパスを片手に地面にテキトーさが極まった落書きの地図を書いてルートを選出する。
大体だが楕円形で長径が50キロ短径30キロ、半径として外周は200キロプラスアルファくらいの島、まぁ公式とか忘れてるし覚えていたとして直径か半径かも解らないから正確ではないが。
さておき、南側から上陸して西回りに進み小川を発見、そこから南東方向に森に分け入った、水源から僅かに東側に拠点を設置しているから東南東方向に進めば大まかではあるが上陸地点に戻れる筈だろう、昨日とは違いこれから明るくなりだす訳だし、荷物を取りにいくついでに獣道とも言えない通路を構築しよう。
手斧で邪魔な枝を切り落としながら下草を軽く踏み固めて多少でも歩きやすくするための作業をこなす、川沿いより楽に海に出たいし、想定上は鰯を捕まえた岩場の近くに出る筈で、岩場であれば貝類も豊富に捕れる筈だ。
おおよそ2時間、途中で切り落とした枝を拾い集めながら拠点まで戻ったため時間は掛かっているが、それでもなんとか海にまで出た。
とりあえず出口の近くの地面に切り落とした枝を数本ぶっ刺して目印とし、とりあえず南東方向に進む。
15分で荷物の隠し場所にたどり着く、予想より南側に出たらしい、やはり計測も無しで上手くいく筈も無いな。




