密閉性
時に木の枝を過剰なまでに払い、時に木を斬り倒す、時にちょっとした大きさの岩を動かそうと歯を食い縛った後諦め、少しずつ進んでは問題箇所を切り開いていく。
ほんの20メートル足らずを進むのに30分も費やし、気付いた時には大量の薪が後ろに転がっていた。
とりあえず半分は進んだし残りの作業は明日だな。
今日の所は持ち運べそうな枝だけを拠点に運ぶとして斬り倒された幹は後日にしよう。
流石に小分けにして運び出すには時間が足りないだろうし明日以降で良い。
薪が更に補充されたがほんの一抱え程度では誤差の範疇だな、それほどまでに積まれた薪の量が多い。
なんなら一部を屋根材に流用しても良いくらいだ。
思考の迷子と思い付きを発端とする予定の構築と切り替えにもいい加減慣れた、高校時代からの付き合いだし当たり前と言えば当たり前かもしれないが。
とは言え行き当たりばったりなのはどうかとも思う、特に今みたいな非常事態だとな、悪い案と言う訳ではないが流石に精査も必要になるか、今晩にでも計画を詰めていこう。
ツラツラと考える間に磯に到着し、早速作業に取りかかる、ホースのセットと吸出しを一切の無駄もなく済まし、この2ヶ月と少しで洗練された鍋による汲み出しで一気に水を抜いていく。
もはや30分と掛からないまでに圧縮された動きはおそらくプロの域に達している。
まぁこんな作業を生業としている人が居るとは思えないし、居たとしてプロとかアマとか言うようなジャンルでもないのだが。
鍋一杯の魚を手に入れ、本日のメインかどうかは別として一大イベントであるところの竹筒チェックといこうか。
ロープを手繰って竹筒を引き上げ中を確認する、朝に入れた魚が残っているなら密閉性は悪くないと言う事になる。
残っていない場合は密閉性が悪いかもしくは何者かに食われたかだ、何者かもいない場合はお手上げではないが相当の手入れが必要になる。
蓋を外して中を確認してみれば竹筒の中でぐったりしている魚がいた。
いくら生きが良かったとは言え流石に夕方までは持たなかったらしく、すでに息耐える寸前と言った感じで生き餌と言うよりルアーか何かに使った方が魚が捕れそうだな。
まぁ流石にこれ以上むち打つのも悪いししっかりと糧にしよう。
代わりとなる魚を竹筒に入れ、また海に沈める、とりあえず密閉性は有るらしいし残る問題は魚が入るか否かで一度は捕れているし、長い目で見よう。 持って来た切り出しただけの竹筒に関してはもはや期待するだけ無駄と言う感じだな。
こちら側にはタコはいないか相当少ないかよほど警戒心が高いらしい、俺としてはまた食べたいのだが残念ながら捕れなければ食えない、しばらくはシェルターに行く事も無いだろうし魚だけの食事になる。




