番外編7-4
エンドロールも終えてようやく中座できるな、トイレも済ましてしまうか、そのついでに火入れだな。
事を済まして水を補充しつつお茶請けはもう必要無いだろうと判断して部屋に戻ればテーブルの上にはチェス盤だ、目敏いと言うかなんと言うか見える位置には置いていたが発見して用意していたらしい、と言うか既に一手目を打っているな、キングの前のポーンって事はキャスリングは確定として中央からガンガン攻める感じだろう。
ならば仮想望と何度も対戦して腕を磨き緩急を覚えた俺のカウンター戦法を見せるか、とりあえず左翼から切り込むイメージで行くとしてビショップの道を作るか、最序盤は基本的に長考は無い、定石通りに進めると言うか愚かな手さえ打たないならばとりあえず形を作るってのが常でおおよそ互いに五手も進めば大体の道筋が見えてくる、その辺りでキャスリングとかも起こるし早いなら取り合いも起こる、先ずは序盤の猛攻を凌ぎつつ布石を打って中盤の猛攻を防ぎつつ布石を生かして後盤の猛攻をいなして食い破る、そのイメージを固めてだがその前にそろそろ火を止めないとな、音がそろそろ沸騰を伝えてきている。
おおよそ80℃くらいがベストってのが個人的な経験則でそこから40℃くらいまでを繰り返してがまた楽しい、とろ火でじっくりってのも悪くはないが手慣れた方を選んでしまう。
さて、盤面は特に代わりなくだ、最序盤だとほとんど動きはないからな、とりあえずビショップで牽制しつつナイトポーンで固めるか、その上で少しずつ左翼に切り込むが仕掛けのタイミングは逃せない。
「おでん?」
「ん? あぁ、一人なら二食分、二人なら一食分くらいだな、種は大根に厚揚げ、竹輪にこんにゃく、卵と牛スジ、ゴボウ天に餅巾着」
自分で言うのもなんだが物凄く無難だな、これにご飯だが昼に飲んでないなら焼酎も有りだった、出汁割りとかヤバイくらい進むんだよな。
「予備の布団は?」
「寝袋が有るな、泊まってくか?」
コレが先輩なら何が何でも叩き出すが望ならば特に気にならない、気兼ねする事もなく心配もない、男女だから多少は思う所はあるがそれだけだな。
「えーっと、替えの服と下着は有るし、明日の予定は特に無しか、天気は……明日の夕方までは晴れだから洗濯物も大丈夫、って事でよろしく」
ポーン進めながら言う事ではないと思うがまぁ改まって言う事でも無いか。
「あいよ」
受けつつナイトでルークを前線に、とりあえず互いに形を作ったな、予想通り中央に兵を溜める望と左翼固めている俺、後はここからの猛攻を何処まで犠牲無く耐えられるかだ、そしてどのタイミングで攻めいるかだ。




