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番外編7-2

 押し入れから座布団を出しておく、しかし今時押し入れってのも珍しいよな、まぁクローゼットの類いが皆無だしチェストだけだと収納が追い付かないから助かっている。

 地味に広いしな、これがなければもう二畳は部屋が広がるくらいの収納スペースで使わない物とか容れるのに重宝していて大助かりだ、お高い家賃分くらいは余裕で有ると思えるがクローゼットじゃなくて押し入れの理由は一切不明だな。

地味に部屋も畳張りの和室だし、新築というほど新しくはないがマンションとしては珍しい部類に入る、いまや襖や障子ですらデザイン化しての物が大抵で寺とかにでも行かないと見れない、それを考えると中々にレアな所に住んでいるな。


 「真っ昼間からお酒って、遊びに行かないの?」

 テーブルの上の酒とツマミを見咎められたが休みだし構わないだろう。

「ところで何をしていたの?」

「ん、映画でも見ながら酒だな、後は読書とかもしたかった」


 「AV? お酒飲みながら」

 「どんな耳してんの? 映画って言ったよな俺」

 調子狂うな、なんか見た目望で中身先輩って感じだ、俺が知らない間にそういう装置が完成したかのようだな。


 「ふーん、あ、コレ再生して」

 単にふざけていただけかね、差し出されたのは、これも名作シリーズの一本だな、まだ見た事は無いが確か元軍人が部下に娘誘拐されて取り戻す痛快アクションだったか、セットしつつテーブルと座椅子の位置を調整する、対面だとテレビ見れないしな、横ならびにだ、ついでにウィスキー飲みつつチーズとサラミだけじゃ望に悪いと個包装された食べきりのポテトチップスを差し出す、ポップコーンとかあれば気分も出るがあいにくとだ、買いに行くつもりもないしな。

 配給元のロゴとか出てオープニングだが物凄くアットホームだな、映像の古さも有ってホームビデオか何かのCMっぽい、木を運ぶシーンや父親の鍛え抜かれた肉体を無視するならばだが。


 「この間海野食堂初めて入ったけど、常連確定とか言ってたカレー、あれマジね、物凄く癖になる感じでまた行きたくなるもの」

 飛行機から飛び降りる主人公見ながら言う事ではないと思うが確かにコイツと鶴子を引き合わせる頃には食堂は一度畳んでたからな、親父さんもその頃は入院してたし先輩と同じくあのカレーは食べていない、ならば衝撃的だろう、俺でもあのスパイシーさは脱帽で祖母でも愕然としただろうしな、八角と花椒が本当に良い味を出している。


 「だろう? マジで祖母のより上手いと思えるのはお袋のとアレくらいだ、一度消えたのは本当に残念でならないよ」

 事故さえ無ければ、足の怪我が無ければ店は続いていた、だが悲しいかな事は起こってしまってどうしようも無かった、ただ後になって鶴子の言葉を借りるなら『保険の特約は良く読んだ方が良いしダメ元でも申請した方が良い』そして『友達は持つべきね、特に親が医者なら尚更よ』である。

顛末は単純で入院費の支払いとかでいろいろ嵩む上に予後が悪く長時間の立ち仕事は無理だった、その上当時親父は海外に出張してたからな、ヤブではないが数段劣る医師に診てもらうしかなかった。

それが数年して保険見直したら特約で十分な保証が受けられる事を知り申請、ギリギリ期限内で満額下りた上に予後治療費も出る、そこまで来て普通の医者なら等の昔に治療の済んだ傷でお手上げでも親父にカルテのコピー見てもらえば半年でどうにかできると太鼓判だ、伊達や酔狂で足に関して神の手なんて呼ばれてはいない、その片鱗は僅か半年で歩くのは勿論、立つのも厳しいから歩くのは少し辛いが可能程度まで回復させやがった、後はもうリハビリの頑張りとかで若干動きは鈍いが問題無く仕事ができるとなれば成し崩しだ、店の再開までは早かった。

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