番外編6-2
やはり初めての場所は緊張するな、今日から此処が俺の職場だ、広義なら既に中に居るが狭義ではこの扉を開けた瞬間にだ、扉の横のリーダーに社証をかざせば鍵がガチャリと開いてノートパソコンとデスクの並ぶ部屋だ、しかしノートパソコンか、投影式だとどうしても後ろからはある程度対応できても横からは盗み見されやすいし何より向こう側が透けるから集中できないと前に聞いたな。
まぁノートパソコンでも横から盗み見できるが、投影式よりは難しい、此処は開発部門では無いがそれらの成果は集まるからな企業スパイ対策は入念にだ、でなければ出入りに社証とか必要無いし投影式のデバイスを使うだろう。
「本日よりお世話になります高田です、宜しくお願いします」
先ずは挨拶から、緊張でやや喉も乾くがしっかりとだな、辞令を手渡して次の指示を待つ、とりあえずは誰かの下で手伝いをしつつ仕事を覚える事にはなるのだろうがこの先が此処で決まるかもだ、緊迫してくるな。
「はい、いらっしゃい、ただ盥回しにするようで悪いけど君は所属は此処だが部屋は違うんだ、ちょっと新しいプロジェクトの立ち上げ中で本当なら他の人にお願いしたいけど手一杯だし君に引き継ぐにも一段落させるにもその間プロジェクトを止める訳にもいかない、まぁ君の卒論とか読んだ限りじゃソレなりに戦力として認められそうだし大抜擢ってヤツさ、まぁ少なくとも半年問題無いならそのままだし問題有るならその頃には一段落着いただろうベテランに任せる、気楽にいきなさいな」
言葉の針が凄いな歯に衣着せないって感じで下手すりゃパワハラだが上手く釘を刺しつつフォローもしている、なんか百戦錬磨って感じがしてくる。
「とりあえず7C会議室、あぁ7Cって言っても七階には無いからね、わが社は七八階が会議室階で七階は株主総会とか会見場のA会議室二つ、八階にコンペとか用のB会議室、そして個別案件とか少人数秘密会議とか、後は今回みたいなプロジェクトルームのC会議室、もう一つ十階に役員会とか取締役会専用の会議室が有ったりする、7CはC会議室の7番で八階ね」
言葉通り盥回しだな、総務部、人事部と来て販促、そしてプロジェクトルームか、物凄くゴールまでを遠回りしている気分だ。
「後は一応、一課と二課の違いだけど一課は主にメディア対応ネット対応企業対応の部所、若干広報営業と被るが専門はCMとか企業向けのコンペとかだね、二課は顧客とか営業広報からの要望とか受けて、まぁ広報営業開発販促を足して割った感じだね、各部門の橋渡し的なのも請け負う花形じゃ無いけど大事な部所だ、今回みたいに新規イベントとかプロジェクトとかも立ち上げるから裏舞台ばかりでもない、二課だからなんて悲観してるならその思い違いは早めに捨てなさい」
特に悲観もしていなかったと言うか窓際や追い出し部屋でなかっただけ良かった、それに一とか二とか三とかは数字でしかない、優劣は無くそれを言い出せば最も偉いのは人事部になってしまう、それこそ人事部1年目と勤続40年の大ベテランでも前者が偉いなんてのはオカシイ、年功序列の社会は甘んじて受け入れるし目に見える階級も良しとするが部所とか本社とか支社とかでそこまでの違いは無いと信じたい、まぁ間違いなく目に見えないソレは有るのだろうが。




