番外編2-1
ようやく車のローンを払い終えて、その分を車検の積み立てとチマチマと払っていた奨学金に充当させるとして数年か、まぁ普通なら40代くらいまで掛かるかもな奨学金を30前に払い終えられるのだから上々だな、後はバイクだが、正直に言って未練はない、今はどうにも天体観測に意識が向いていてバイクを買うよりは少し良い望遠鏡を買いたいくらいで自宅に市販の玩具だがプラネタリウム買ったくらいにのめり込んでいて、そうなるとバイクよりも今使っているワゴンの方が都合が良い。
テントとか望遠鏡とか積むスペースを確保できるし当面の目標はバイクよりも望遠鏡、その次はワゴンベースのキャンピングカーだ、だがハッキリと言える、山に何度登ってもあの無人島の空には叶わない、街の明かりがどうしても気になって僅かな街灯や看板を照らす電球が鬱陶しくて仕方がない。
こうなると穴場だが心当たりは有る、後は予定だけだな。
「よぉ、次の新月、予定有るか?」
挨拶もそこそこに電話で聞いてみる、主語もクソもないが相手が相手だ、理解はするだろう、
「山以外は無いわね、星に目覚めたとか言ってたし連れていって欲しいの?」
流石は望、先輩に次ぐ才媛だ話が早い、そのまま待ち合わせ場所と時間、目的地をおおよそ聞いて後は仕事しつつ来週末を待つだけだろう。
余計な仕事が舞い込まないように先んじて起こるだろう問題を一つ一つ丁寧に潰してプロジェクトを進め、根回しやおおよその骨組みを固めて、まぁ元から順調で問題なんぞ起こる気配は無かったのだがそれでも交渉とか納期とか、数字とか、その辺りを洗い出せば大なり小なりミスは有るし整合性を取ったり修正したりでここまでの仕事が無駄になんて芽を完全に潰して、そのついでに休日出勤を潰しておいた。
これに関しては俺は本気になれると改めて実感して、夕方には仕事を終えて一度家に帰り着替えとシャワーを済ませて準備していた荷物をワゴンに積み込み、待ち合わせ場所近くのラーメン屋で腹を満たす、ついでにコンビニで水とか買ってから充電スタンドで急速充電と水素の補充、祖父によれば若い頃はまだガソリンスタンドも多かったらしいが最近は併設している店舗すら少ないな、基本的に電気自動車優位で馬力が必要なトラックとかが例外ってくらいだ、そして大抵の場合そういうのは専門の場所が有るからな、店舗は減っていく。
それでも皆無では無いのはやはり需要は有るのだろう、今はバイオエタノールを売るスタンドの方が多いしな、栄枯盛衰ではないが少しずつ業務形態を変えないと生き残れない時代だ。借りたトイレで用を済ませて車に戻れば見慣れた軽ワゴンが俺のワゴンの隣で充電している、ナンバーも一致しているな。
「よぉ、こんばんは」
「ん、こんばんは」
なんか他人行儀で嫌だな、コイツと会うのも二月ぶりくらいだが相変わらずだな。
「ちっと約束には早いな、流石は5分前行動徹底派、この調子で買い物も短くなったりしねぇか?」
とりあえずそんな風に聞いてみればニヤッと笑うだけだ、それは否定か肯定か、まぁどうでもいい、コイツの買い物が長いのにも慣れてるからな、言葉の様にウンザリはしていないし最近はむしろ一緒に楽しめる様になってきたくらいだ。
彼女のワゴンを追いかけておおよそ2時間、山の七号目辺りのキャンプ場の駐車場に車を停めて手続きを済ましてテントを設営してしまう、それらを終えると山登りだ、望の話だとおおよそ1時間登った辺りがベストらしい。
安物の望遠鏡とシートを担ぎ胸と頭に赤色のライトを取り付けて山に入る、何故だか望の望遠鏡も担がされたがその程度で解説が着くなら安いな。




