帰宅
黒塗りのタクシーに揺られて30分、飛行場までは割りと近かったらしい、しかしタクシーに乗って移動と同時に虫の知らせも弱まって既にゼロに近い、初代はこんなのが日常茶飯事だったのかと思うとよくストレスで発狂しなかったと感心するが天運に絶対の自信が有ったらしいから心配の必要は無いのかね。
しかしタクシーが黒塗りか、地元だと珍しい部類だが確か関西、特に大阪近辺だと簡単にハイヤーに換装できるから黒が多いと聞いた覚えが有る、あれは大学の授業だったかな? 兼用と言えば語弊も有るが例えば赤とか黄色とかしかないタクシー会社だと冠婚葬祭とかには呼びづらいが黒ならまぁ許容できるし理には適っている、経済的には利にはと言い換えた方が良いのかね? 音は同じでも意味は違うし。
ヘリで揺られて数時間、コッチは酔わないんだよな、どうして船だけダメなのか不思議だがそういう物なのだろう、マジで三半規管鍛えた方が良いのかね? オフィスチェアでグルグル回れば鍛えられたりしないかね? それかロデオみたいなのでになるのか? それとも体幹鍛えて揺れを消せばどうにかなったりするのかね。
我が家の庭、まぁ正確に言うならば見えている町の様なのは全て我が家の庭でありそこに家を建てて貸しているとも言えるが、武家屋敷の如くの塀の中に武家屋敷に倉、そしてサッカーが出来そうなくらいに大きな庭、裏山まで含めて見える範囲はほぼ我が家の土地だ、喜一より数世紀、ほぼ維持しながら受け継がれてきた高田家の異常性の証拠。
庭に書かれたHの文字にゆるりと着陸してようやく帰宅か、ここまでダイナミックな帰宅って初めてだな、と言うか遡れば出発も初めてだ、なんと言うかこの1年は初めて尽くしだな。
全くもって嬉しくはないが経験は積めたと考えよう、ようやく石橋生活とはおさらばだがしばらくは残るだろう、どうにも保険やら対策やらを頭の片隅で探している節が有る。
久々の我が家だが懐かしさを感じないな、見慣れた光景と言うかなんと言うか、平屋の武家屋敷に池の名残のコンクリート、倉に松、柿、紅葉等の庭木、人生の大半を此処で過ごしたんだし今さら感慨もクソも無い、むしろ大学卒業して就活の失敗報告に帰った時の方が懐かしさが有った様な気がする。
あの時は正月以来だから4ヶ月ぶりとかか、1年ぶりの今回より短いのに感情ってのはどうにも不思議だ、己の感覚ながら掴めない。
後で飛び立つヘリコプターのエンジン音を聞きつつ玄関を目指す、地味に広い上に庭の端の方に簡易のヘリポート書いていたから遠いな、まぁ裏山とかで風の関係も有るのだろう、犬でも飼っていたならこの間に喜んで吠えまくるとかしてたのだろうが我が家にペットは居ない筈、この1年で猫とか飼い出した可能性もあるから断言は出来ないがまぁ人間しか居ないだろう。




