前と後
何時もの様にストレッチや準備からだ、漁もやるとして昼は浜辺で待ちだし朝飯で安定かね、一応は焼き干し残しておくか、お弁当が絶対に有るとは言えないし、まぁ俺は船酔いで何かを食うような元気は皆無だろうが。
その未来を考えると浮き足も一気に冷え込むくらいに億劫だ、去年の事だが記憶はしっかりと残っている。それが数時間続くんだ、完全に地獄だな。
地獄なんぞこの生活で何度となく経験したが質が違うからな、耐え難い地獄ってのはマジで辛いだけで救いなんぞ一片足りとも存在していない、対応対策が無いのだから覚悟して感覚的に長いだろう時間が過ぎるのに任せるしかない。
漁をすませて朝食も済ませてしまう、願わくば朝食を吐き出すなんて事にはならないようにだが波の荒れ具合と体調次第かね、見た感じ海は穏やかだがこの近海だけだろうし見える範囲なんてせいぜいが数キロ、遥か水平線の先は全くの不明だ。
焼魚とご飯の朝食を済ませて手早く警戒網を撤去だ、範囲が狭いから余裕で間に合う、朝が早いからな、仮に7時30分くらいでも余裕は有る。
先輩のせいで連絡は来るか不明だが理想は浜辺で待ちぼうけかね、荷物抱えてのんびりと海を見つめて、船が来るのを待ちたい。
手早く鳴子を片付けてテントを撤去してやや予定よりは遅くなったがそれでも7時45分、上々だな。
荷物を纏めてのんびりと浜辺で海を見るともう船が見えている、最後の最後でタイミングバッチシだが今から嫌になる、ダウナーで地獄な船酔いタイムがこの島での生活の終わりを告げるカウントダウンと同期してだ、ファウストではないが時が止まって欲しいな止まったとしても変えようは無いから自ら飛び込むしかない、逃げてどうにもならないならば向かって行った方が効率的だ。
それに逃げても熊とゴリラが待っている、前門後門の例えでもそれぞれ一頭なのにだ、前には船酔いで後ろは二頭、俺の頭が残念でもそのくらいの勘定はできる。
静かに到着したのは去年と同じかは不明だが形は同じな漁船だ、名前とかチェックしておくべきだったな、まぁ今さらだ、荷物を船に乗せてなんとか這い上がる、船長の顔を見るにどうやら同じ船だったらしい、同型の物を所持していなければだが同じ船かどうかは関係ない、どの道数時間は揺られるだけだ。
物凄く嫌だか既に船はバックして反転できるポイントを探している、反重力装置とかこの瞬間に開発されて此処に届いたりしないかね。
体の感覚からどうやらバックから前進に変わったらしい、加速も感じるが揺れも感じる、本当に嫌だが止めた所で苦しみが長引くだけだ、寝てしまいたい、心の底から寝てしまいたい。




