この世界はゲームか何かですか?TSモノとか誰得だよ!
「よし、みんな起きたなー?それじゃ、先ず朝ご飯にしようか。よっこいしょ、ほらおいで」
「「「「「「「ワォーーーン」」」」」」」
返事の代わりにまだ言葉が話せないコボルトベビー達が簡易的遠吠えをする。
そして皆一様に尻尾をフリフリして、目を輝かせて乳を吸いに行った。
その光景は、親犬の乳を吸う仔犬といった感じでとても愛くるしい。
しかし、俺は吸いに行かなかった。
何故か?答えは単純明快、コボルトマザーの俺以外の仔犬を見る目と俺を見る目が違っているからだ。
他のコボルトベビー達には慈母のような視線に対して、俺にはどこか肉食獣のような女の濡れた視線のようなモノを向けてくるのだ。
普通に怖い。
「ほら、コボリスも早く飲みなさい」
そう言って舌なめずりをするコボルトマザー。
息子に何を求めているのだろうか?
他のコボルトベビー達がだんだんと腹をいっぱいにさせて乳から離れていく中、腹の音を盛大に鳴らしておきながら飲もうとしない俺をとうとうコボルトマザーが首根っこを掴んで引き寄せる。
ムワァっと乳臭いにおいが鼻腔をくすぶる。
それに反応して体がまた、俺の意思を無視して本能的に吸ってしまった。
コリコリコリコリっと、軟骨を噛んでいるような音を鳴らしながら乳を吸う。
ピリ辛の乳が出てきて飲みほした。
【コボルト言語を取得】
「ん…はぁああん♡
ふふふ、今日も気持ちの良い吸いっぷり♡」
絶対そのままの意味で気持ち良いを使っていると思う。
本当、あんたのせいで息子が変に育ったらどうするつもりだ。
そういう気持ちを孕んだ表情でコボルトマザーを睨むと、少し目を伏せ身体をクネクネと動かされた。その動きが胃を直撃し、先ほど飲んだ乳を吐きそうになる。
本当に勘弁してくれ……。
◇◇◇◇◇
授乳が終わり、どこかソワソワとしたコボルトベビー達と横一列に並ぶ。
何をソワソワとしているのか俺は分からず、気怠げにヒンヤリと冷たい地面にその身を投げていた。
目の前には何かをやるためにか、七つの石と八つの葉を集めてきたコボルトマザーがいる。
「んんっ、それではみんな。これからみんなのレベルと魔力適性を測るよ」
そう事もなげに告げるコボルトマザー。
それを聞いたコボルトベビー達はウキウキワクワク。俺だけ?。
何を言い出すのかと思えば、レベル?魔力適性?何それどこのゲーム設定?
そして何故かそれをするであろうことを知っていた風なコボルトベビー達。お前達もしかして俺だけ除け者にしてる?イジメとか反対なんですけど……。
「はいはい、落ち着きなさい。やり方を教えるから静かに」
ウキウキが出過ぎてワンワンキャンキャンと吠え出したコボルトベビー達をコボルトマザーが嗜める。
それで鳴き声は止んだが、隣の奴と身体をぶつけ合ったりしてる。仲悪いのか?
「じゃあ説明するわね?まず最初に七つの石を円の枠に沿うように等間隔に置いて、石と石をできるだけ遠い物同士を線で繋げていく」
そう言うや地面に綺麗な円を描き、石を置いていくコボルトマザー。
その後に一つの石と遠い石二つを線で結ぶ。これを全ての石でやっていき、最終的に七芒星のような形になった。
「これで基盤は完成っ。後はみんな葉を一枚ずつ持ちなさい」
基盤完成って早いな…。
配られた葉を左手で摘むが、何かが起きるという事はない。
もしかしてコボルトマザーに遊ばれているのだろうか?
「はいそこ、母に同情の視線を向けなーい。
それじゃ、コボレイから順に円の中心に立っていきなさい」
そう言われてコボレイくんが四本足でヨチヨチと歩く。
二本足で立てば良いのに。
円の中心まで行ってストンと熊みたいに座ったコボレイくん。
「ん、じゃあ今から言う言葉を復唱するのよ?
我は賢狼の子、我は剣と魔の祝愛を欲す
剣は魄を助くこと願う、魔は魂を助くこと願う
我足あるが故に大地に立たば之、魄の力なせるなり
我翼なきが故に天空に舞わば之、魂の力なせるなり
我が生は父母より受け継ぎて、魂魄の下になせるなり
天魔、盤上の我に加護篤き事願わん」
おいおいおいおい。
こんな長ったらしい言葉を復唱とか無理ゲー臭高いぞ。
しかも俺たちはまだ言葉を発しようとすると鳴き声になるんだぞ?どうやって復唱するんだよ……。
そう思っていたが、コボレイくんは意外と根気強く鳴き声で復唱をしている。
だいたいワンワンキャンキャンクゥォーーンの繰り返しに聞こえるが、何を発しようとしているのかは何と無く分かる。たぶん同じ種族だからだろう。
最後にワァオォオオォォオンっと遠吠えもどきをしたコボレイくんーー今頃気づいたが兄弟なのに君付けというのは他人行儀か?ーーはピクンッと身体を少し跳ねさせた。
産まれたてのくせにそういう遊びでも覚えたのかと、場違いにも思ってしまった俺を殴りたい。
これもコボルトマザーの喘ぎ声を聞き過ぎたせいだ、たぶんそれで頭がそっち系の事に変換してしまっただけだと思いたい。
話を戻すが、身体を跳ねさせたコボレイくんは何か驚いたような嬉しくて仕方がないような顔をした。
なんというかサプライズバースデイパーティを友人と恋人に開かれた、そんな時にしそうな顔だ。
「見えた?見えたら手に掴んでいる葉に力を加えてみなさい」
わけの分からない会話なので、たぶんやった奴にしか分からない事を話しているんだろう。
コボレイくんがコクリと頷き、葉を掴んでいた右手を視た。と同時に葉が真っ二つ!
これは凄い!
もしかしたらコボレイくんは前世の漫画に出てきた人柱力のオレンジ頭の生まれ変わりかもしれない。
将来チャクラの形質変化に性質変化までして、見事できそこないを脱出するかも。
最終的には復讐者くんとタッグを組んで先祖をフルボッコするかもしれない。
今から将来が楽しみとはこのことだね!
そうやって目をキラキラさせながらコボレイくんを見ていると、見られていることに気づいたコボレイくんが右腕(右前足?)を軽く振ってきた。
ヤバい、産まれたてのフワフワモコモコな犬に手を振られた!鼻血が出そうだ!
その後他のコボルトベビー達も同じようにワンキャンワァオォオオンっと吠えて、何かを見たらしく頷いた後手にしていた葉を視た。
その度葉が切れたり焦げたり砂みたいになったり、気孔から水蒸気を出したり葉に砂鉄が集まったりした。
コボルトマザー曰く、葉は魔力に反応しやすいマギラカスという樹の葉を使用しているらしい。
だから俺たちのようなまだ魔力が微小な奴らが力を加えただけで、その時に発生した極微小な魔力に反応して小さな現象を起こすらしい。
それを考慮すると、コボレイくんの葉が真っ二つは凄いんだって。魔力総量が多いんだなコボレイくん。
というのを何故か懐かれたコボレイくんと聞いていた。
可愛いし軽いからあまり邪魔ではないのだが、そんなに顔を俺の顔に近づけないでくれ。
普通に見づらい。砂鉄が集まる時とかカッコ良かったのに鼻を頬に押し当てられて途中から見れなかった。
ワザとではなかったらしいので怒らなかったが……。
「さて、最後はコボリスよ。おいで」
とうとう俺の番がきた。
待ちに待っていたのでジャレてくるコボレイくんが体重をかけていたことを忘れて走りだしてしまった。
そのおかげでコボレイくんは地面にビターンっとダイブした。だがそれでもニコニコとして頑張れ〜っと鳴いてくれた。
良い子だ。
「はいはい、ちゃんと円の中心に立ってね〜。ってコボリス、二足立ちで良いの?疲れるよ?」
へ?座った方が良いのか?
でもな〜、こういうのはゲーム的に立ってるもんだしな。
ということで立っていよう。
「まあ、結果は変わらないし良いけど」
良いらしい。止められると思ってしまった。
俺頑張るよコボレイくーん、と手を振ろうとコボレイくんの方に向いてみると驚いた顔をしている。
何故驚いた顔をしているのだろう?気になるので後で聞いておこう。
「はーい、復唱してよー」
その言葉の後に7回聞いた呪文を唱えるコボルトマザー。
俺もついていくように唱える。
「我は賢狼の子、我は剣と魔の祝愛を欲す
剣は魄を助くこと願う、魔は魂を助くこと願う
我足あるが故に大地に立たば之、魄の力なせるなり
我翼なきが故に天空に舞わば之、魂の力なせるなり
我が生は父母より受け継ぎて、魂魄の下になせるなり
天魔、盤上の我に加護篤き事願わん」
びっくりした。
俺は今まで言葉として発生できず、コボレイくんや他のコボルトベビー達と同じく鳴き声だったのに、呪文がしっかりとした言葉として発声できていた。
びっくりしたのは俺だけではないようで、コボレイくんや他のコボルトベビー達、そしてコボルトマザーまでも鳩が豆鉄砲を食らった顔をしている。
コボルトマザーにいたっては、呪文を途中言えなくなっていた。
俺は7回聞いていたので覚えていたが、もう少ししっかりしてほしい。
唱え終わると同時に身体中に何かが奔った。
よく雷が奔ったなどの表現をするが、そういうのとは違った感じだ。
雷が奔ったという表現だと俺の中のイメージでは体の芯を貫かれた感じがするのだが、これは身体中を細かい粒子が駆け巡っている感じだ。
その粒子には駆け巡る道があるようで、たぶんそれは血管並みかそれ以上に多いと思う。
その道は全て心臓を経由してヘソの奥辺りに至る。
道は一つ一つがほつれた糸のようで、心臓とヘソとの間の糸はなんだか縄のような感じだ。
その縄がヘソの奥でグチャグチャに絡み合っている。
なんだかそれはとても非効率で、気持ち悪い気がした。
なので絡み合った糸をコイルをベースに纏めるイメージをしていく。すると成功したようで、グシャグシャでゴワゴワな球がキッチリカッチリしたコイル状になった。
「ふぅ…」
と息を吐いてイメージするために閉じていた目を開ける。
今日何度目かのびっくり。
目の前に光ったオレンジの線で文字が浮いていた。
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レベル:3
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すっごく簡易的に書かれたそれ。
ただそれだけでも俺にとっては驚きに値した。なんせ、こんなファンタジーな現象は前世ではなかったのだから。
凄いな凄いな、と眺めていたら耳元でピコーンっと軽快な音が響いた。
【賢狼の見物が起動しました。詳細を視ますか?】
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YES. or NO.
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どこかで聞いたことがある言葉が流れ、先ほどの文字が形を変えた。
YESとNOと書かれたそれを俺は見つめつつ、何が起こっているのか予想した。
結果、分からないのでとりあえずYESを選んでおく。
すると文字が滲み、形を変えて表れた。
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レベル:3
名前:コボリス
性別:♀
生命量:30
魔量:4
攻撃力:21
防御力:7
俊敏性:9
殲滅力:12
防護力:8
変換性:0.1/1{変換数/所要時間(秒)}
スキル
【技能喰者】
【賢狼の見聞】
【七日七晩不眠不休】
【猛爪】
【迅脚】
【危機察知】
【魅惑(弱)】
【コボルト言語】
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THEステータスって感じの表記。
ズラ〜っと書かれた俺の情報であろう物。
スキルとレベルだけ何故カタカナ英語なのかとか何このゲーム設定とかスキル多いとか、いろいろとツッコミ所満載なんだけどそんなのどうでも良く思ってしまう。
それより先ず抗議しなければならないのがあるから。
「性別が……女………だと…!?」
はい出ました!
当作品のタグにしようかどうか迷っているほどの残念系!
モンスター転生に続くかもしれない新たなジャンル(こういうものはジャンルとは言わないのかな?)
TSモンスター(∩・ω・)⊃ktkr!
男の娘、草食系男子、ショタ、女装男子、美少年、TSっ子と数々の腐なモノが溢れているこの世界に新たな革命を!
モンスターを擬人化する素晴らしいアイデアを考えた方に、天邪鬼に立ち向かったジャンルであるモンスター転生。
美少年やイケメンという女大好きな我ら男子勢の敵をTS(性転換)させることで逆転の発想を成した賢者、そんな賢者の脇腹を抉るTSモンスター。
天邪鬼はここまできた!
この日歴史は動いた…!
誰得だよ、ふざけんな、俺に可愛い女の子を寄越せという方々。
ざm(((◾︎=-正義の鉄槌
コボリス「すんません、皆さん。後でしっかり説教しとくんで、許してやってください。なお、作者は擬人化やTSものが嫌いなわけではないので勘違いしないようにお願いします。ただ天邪鬼なだけなんで、これからも応援よろしくです」