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Re:KoboldSaga  作者: 空見鳥
28/33

公爵家のご事情

遅くなりましたm(_ _)m


今回、少々お話の内容が今までのと重複している点がありますがお許しくださいm(_ _)m

 グローリアス正教国首都より東に五百里ほどにある公爵領主要要塞都市グレイラビ。

 その中央部には住民非住民問わず、公爵家の権威を知らしめるべく建てられた大館がある。

 大館の見た目を一言で表すならば、豪華絢爛。見る者が誰であろうと湯水の如く多額の金を注ぎ込み建てられたのだと予測できるだろう。

 そして、その考察はまさに的を得ている。

 公爵家は多額の税収を住民より徴収し、それによってこの大館を築いたのだから。


 肥沃な土地が多くある公爵領では過重な税収を巻き上げようと不平不満は生まれない。

 なぜなら死なないから。

 過労死や餓死といった当たり前のように起こるそれらがこの領には存在しない。その上、実に85%もの税収によって医療費などが負担されるので病死もない。金は領内に住んでいる者なら困ることのない収入を得ているので、これといった実害が無いのも役立っているだろう。

 この領内の人間には生き辛さというものがないのだ。


 驚くべくは人間の五大欲であると本国の国教が語る『食欲』『色欲』『残虐欲』『金欲』『知識欲』。そのうちの一つ『金欲』がこの領民たちには鈍いことだ。

 確かに金が嫌いというわけではない。だが、彼らは分からない。金儲けをする意味が。金がなく、貧しさというものを味わった経験がないが故に。

 それは商人にまで蔓延しており、ほとんど慈善事業のような為体(ていたらく)である。そのくせしっかりと儲かっているのは、これもまた公爵領だからだろう。他領の商人たちからは公爵領の商人は何を考えているのか分からない、裏の顔が知れないと恐れられているのはまた別の話。


 そんなノホホンとした土地の領主たる公爵家もまたノホホンとしているのかというと、これは否だ。

 公爵専用の執務室にある執務机の上には頭を抱えるほどの難題が紙の山となって積み上げられている。

 公爵家現当主アスター=グル=エンドレーは一冊の本と遜色ない厚みのある束ねられた報告書を一つ手に取ると、それを読み込む。

 報告書の内容は以下の通り。


 曰く、

・エンドレー公爵領西にある通称ビギナーズ大草原にて完全砂漠化を確認。大草原守り手たる精霊樹ドライアドは跡形もなく消失。

・ドライアドの消失による土地の荒廃化。それによる公爵領初の凶作を確認。

・凶作による物価の上昇。領民の不安、援助の申請。

・生まれて初めて経験した凶作に動揺した商人たちによる買い占め。それに対する領民の不満。


 などが事細かに記載されている。

 トドのつまり、

 稼ぎは他領よりもずっと高い公爵領民だが、いかんせん貯蓄するという考えがなかった。あればあるだけ使う。そんな生活方法でも公爵領では問題なく生活できるから。

 だからこそ、それまでの生産量から比べて微々たる減量で凶作などと抜かした。

 実を言うと、今回の取れ高も他領の平均的生産量に増す量が上がっているのだ。だが、それまでと同じく消費したために物資が足りなくなり、凶作だと(のたま)い軽々しく資金援助を申し出た。

 そんな自業自得にもかかわらず、公爵家からの資金援助が襲いと不平不満を唱え、商人たちは自己防衛のための暴挙を愚行した。

 ということが、報告されているわけだ。


 アスターは自領の民達の愚かさに頭を抱えずにいられなかった。


「精霊樹が消えてから、たった数日程度でここまでとは……。はぁー……」


 確かに、精霊樹の庇護に甘えていたところの多い自領。その精霊樹が消失したのだからどうなるかは予測し易く、現状のような予測もしてはいた。だが、それは最悪とまではいかずともマイナス的予測だ。悪ければ、という言葉が予測の前に入るのだ。まさか実現するとは夢にも思っていなかった。深い溜息を吐かずにはいられない。


 他にもある報告書を読めば、多種多様な問題が記されている。

 その中でも危険度の高いものが三つ。


 一つ、《災害指定個体『土地神を喰らう妖魔』の行方や如何に?》と題された報告書だ。

 これはアスターの部下からのものではなく、宛名付きで送られてきたものだ。

 今回の元凶であるかの妖魔。危険であるし、何よりこいつのおかげで今の面倒が起こっているのだ。一個人として気になるところがある。


 一つ、輸出先との経済的衝突だ。

 精霊樹の庇護篤き肥沃な土地柄であったエンドレー公爵領。経済相手は幾らでもおり、その経済相手としては安定した輸入先がまさかの凶作。その上、これから回復の見込みはない。

 これといった特産が豊富な食糧しかない公爵領に将来的にも現在進行的にも輸入ができるものはなく、それよりも大食いの比較的多い公爵領民には今ある備蓄では足りないことを知っている経済相手は足元を見た商売額を請求することで利益を得ようとしたのだ。


 最後に、爵位降格の可能性だ。

 三つの危険において最もアスターとエンドレー公爵領、しいては公爵領民に大打撃を与えるのがこの問題だ。

 この問題が実際に起これば公爵としての権能は奪われ、正教国においてトップに君臨する教皇、枢機卿に神族末裔や使徒に準ずる高位の立場は無くなり広大な領地は削られる。

 権能が奪われれば国においての発言力と権力は消える。

 ただでさえ元は子爵からの成り上がり公爵であるエンドレー家は数多くの政敵が存在し、地位と権力の失った後はどうなるかなど目に見えている。

 その上、統括領異動が認められなかったエンドレー公爵家の領地は辺境、すぐ近くには魔物の巣窟たる樹海まであるのだ。


「――そうだ。樹海があったな」


 はたと気づいた。

 正教国枢機卿さまに無理矢理押しつけられた領地のお荷物。

 樹海。正式名称ウエストホール。

 エンドレー公爵領の西、ちょうど首都とグレイラビとの間に横たわる鬱蒼とした巨大な樹海で、この樹海のせいで『エンドレーは正教国の巨大な孤島』と他国に笑われる。

 実際、首都に向かうには樹海を大きく迂回しなければならず、首脳会議を起こす時は毎度エンドレー公爵家が首都に訪れた日より三日後という暗黙の了解さえあるほどだ。

 そのおかげで教皇や神族末裔の家方には覚えが悪い。まあ、その話は置いとこう。


 話を戻す。

 これまでは樹海との間に精霊樹が存在し、魔物たちの侵攻はなかった。しかし、その精霊樹は先の報告書に記されていた通り姿を消した。障害物はなくなり、目の前にはご馳走が置かれている。獣ですら食いつくのは確か、それに知能が劣るとされている魔物が食いつかないわけがない。


(必ず蹂躙しにくる。それも近いうちに、少数規模でなく種族単位で―――)


 もっと言えば、今ある報告書の中に魔物の大遠征についての報告書が無かったことに違和感さえ覚えた。

 醜い欲望の塊たる魔物共がこの好機を見逃すはずがない。

 少しでも智慧の聡い者、機を読める者がいたならば数日と間を置かずに一族郎党を従えて、リスクなど一切省みずに突き進んで来るはずだ。


 ふむ、と顎に手をやり魔物の遠征がない理由は何であるかを考え込むアスター。

 そこに執務室のドアを叩く軽い音が小刻みに四度聞こえてくる。

 最早陽は沈み、アスター自身執務室に篭ってはいるものの今日はもう仕事に関しては何もないはずだ。

 故に、こんな時間に執務室のドアが四回連続で叩かれることはない。その回数のノックは仕事の時でしか使用を許可していないのだ。

 それは仕事と生活を区別するためにアスター自身が決めたことであり、執事や侍女にすら仕事以外の目的では三回ノックを徹底させている。況して、家族ならば絶対だ。


「入れ」


 アスターは訝しげに眉をひそめ、しかし落ち着いた声音で入るように告げる。

 するとドアがゆっくりと開けられ、ドアの向こうには老年の執事長が見受けられた。

 執事長の名前はローウェル。元は称号を名に連ねるほどの騎士であったが、今は公爵家に仕える執事となることで性と称号は捨てている。

 模範的な執事服を纏っているローウェルは右肘を直角に曲げて一礼する。たったそれだけの所作を見ただけで、あるいは一線以上の実力の持ち主ならばローウェルの強さを感じ取れたかもしれない。

 とはいえ、凄いというのを先代たる父親から聞いてはいてもアスターには分からなかったが。

 いろいろと身の回りの雑務をこなしてくれるので重宝はしている。


「旦那様、門にて冒険者組合の支局長グラディス様が見えておりましたので、勝手ながら対合室にてお待ち願っております」

「……?グラディスが?なぜ――」


 言い切るよりも早く、ギルドマスターグラディスの訪問理由を察したアスター。

 このような時間に、何の先触れもなく唐突にやって来るということは急ぎである。そして、彼が急ぐような事といえば冒険者や魔物に関する事くらいだ。

 その条件を満たし、且つこの状況下で、というと一つだけアスターは心当たりがあった。


「どうなさいますか、旦那様?」

「よし、会おう」

「お承りました。それでは先にグラディス様に報告しておきますので、旦那様は準備を終え次第お向かいください」


 そう言って下がるローウェル。

 準備を終え次第、といってもアスターがする準備など掛け置いた室内用の羽織りを着るだけだ。

 羽織りを掴み取り、アスターは机に置かれた紅茶で喉を潤すとすぐローウェルの後を追うように執務室を後にした。



◇◇◇◇◇



 公爵家大館の対合室にて、冒険者組合グレイラビ支局長グラディスは幾らするか想像できないくらい柔らかなソファーに座っていた。

 顔にはギルドマスターとしての責任と、元S級冒険者としての厳つさを感じさせる歴史が皺や傷となって刻まれている。

 その風貌は退いて尚、圧力を放っていた。

 グラディスは何かを聞き取ったのか耳を少し跳ねさせた。

 それより数分後、対合室のドアが四回ノックされ、グラディスの応答を聞かずにドアがゆっくりと開けられる。


「グラディス様、もう少々のお待ちを。旦那様は準備を終え次第ご到着いたしますゆえ」

「おう、分かった。尻でも叩いて急がせといてくれや」


 頭を著しく下げるローウェル執事長に軽く手を上げて返事をするグラディス。

 ローウェルは主人に対しての侮辱的発言を『ほっほっほっほっ』と笑って流した。

 いつものやり取りなのでグラディス自身気にすることはない。


「………」

「………」


 いつの間にかドアを閉めたローウェルがグラディスの背後に立っている。

 今も現役であると考えている自負しているグラディスにして、背後に回られたことを気づけなかった。

 まあ、これもいつも通りのことなのだが、何も話さずに背後にいられると変な気分になる。

 微妙な空気が対合室に鎮座する。


「――ああ、執事長さんよ。そこに毎度立ってるが、なんかあんのか?」

「はい、私は旦那様が来られるまでの接待でもいたしましょうかと思いまして。紅茶でも飲まれますかな?」


 その空気に耐えられなくなったグラディスが意を決して問うも、簡単にいなされた。

 グラディスの前にあるコップに高価な茶葉を使用したであろう紅茶が注がれる。

 その紅茶を見たグラディスは自らと公爵家の懐事情の格差を感じずにいられない。

 見渡せば、対合室も結構凝った物が多い。どれもこれも値段の高そうな芸術品であるが、いかんせんグラディスには鑑定能力は無いのでその価値は分からない。


「……」


 勿体無いので紅茶をいただくことにしたグラディス。

 考えが庶民的だと自分で思い、気恥ずかしさを感じて頬を指で掻く。


 何杯目かの紅茶のお代わりを飲み干した時と同時に対合室のドアがノック無しに開け放たれた。


「待たせたか?――待たせてはいないようだな」


 中に入ってきた公爵家当主アスターが詫びを入れようと問うが、美味そうに紅茶を啜り茶菓子まで食べていたグラディスを見て、その必要やなしと言いなおす。

 それに対して抗議をの声を上げるグラディス。


「あ?待っファにきまッフェンホホ!」

「抗議をするなら口の中の物を飲み込んでからにしろ」

「んっ……!」


 喋ろうとすると茶菓子のクッキーが飛び出そうになったのを諌められ、言い返せずに言われるまま嚥下した。

 クッキーを食べたことで乾いた喉を紅茶で潤す。

 飲み干したコップにすかさずローウェルがお代わりを入れる。


「――コホン。で?今回は何の用だ支局長殿?」


 グラディスがまた茶菓子に手を伸ばしそうになったので止めるべく話しを切り出す。

 アスターの問いでやらねばならないことを思い出したグラディスが名残惜しそうに茶菓子を見つめた後向き直る。


「おお、なんとなく分かってんだろうがアスター?」

「はて?脳筋の考えを考察するのは楽ではあるが、私はそのような無駄な行為をしているほど暇ではないのでね。良いから全て話せ」

「チッ、やっぱ嫌いだなお前さんら貴族の話運びはよー。腹の探り合いなんざ庶民の俺にしても意味ねーだろうが」


 苦手な話し方をされて嫌そうに愚痴りながらも、このままでは話が進まないことを知っているグラディスは本題について話し出す。


「先ず、樹海の魔物共が動いた」

「……ほう」

「動いた魔物は二つに別れる。

一つ、特異的進化をしたと思われる赤黒い巨大オーク率いるオークの巨群。

一つ、そのオーク共から逃げるその他の弱い魔物共の群。こいつらは今ビギナーズ大草原――いや、ビギナーズ大砂漠か?に向けて逃走してるらしい」

「その先にあるこの街、グレイラビも危ういということか」

「ああ」


 グラディスが告げた内容、それはアスターが予想したものと当たらずとも遠くないものだった。

 大遠征、というよりもそれは大狩猟とでも言おうか。

 オーク達は逃げる餌を追いかけて樹海からグレイラビにやって来る。その先で逃げた魔物の群とグレイラビの住民諸共狩り尽くすことだろう。

 グレイラビとしては逃げる魔物と追うオークとで二段侵攻を受ける形になる。

 やって来る魔物の種類も気になるが、今一番の問題は数だ。

 数は力だ。それは人間同士の戦争においても初歩的な兵法である。

 オーク達の勢力が一体どれほどかは分からないが、それよりも弱い群は全て逃げ込んでくることだろう。

 その数は不定数。少なくとも通常オークよりも弱い種の群は確実に逃げて来る。少なく見積もっても千は下らない。多ければ万と及ぶかもしれない。

 ただでさえ人よりも優れた基礎能力を持っている魔物たち。それが津波の如く押し寄せれば結果は見えている。

 数千を超える魔物を止めるなど総勢一万五千人では不可能。轢き殺されるだけだ。


「不味いことになったな……」


 アスターは踏み砕かれ押し潰されるグレイラビの姿を想像し、眉間に皺を寄せる。

 しかし、未だその顔には絶望が見えない。

 それもそのはず。彼には領主としてグレイラビ住民を守り、強いてはグレイラビ周辺に散るように存在する領内集落を守らなければならないのだ。

 このまま慌てふためけば領民達に無駄に不安を煽ることになる。それだけは防がなければならない。統制の取れない烏合の衆と化した味方ほど危険な物はないのだから。

 だからこそ、内情はどうあれ外見だけは絶対諦めない。

 そうやって強がっていることが分かるグラディスは声に力を加える。


「迎え撃つぞアスター!お前さんは知らねーだろうが、今この街には冒険者組合最高等級である@級冒険者パーティーがいんだ!冒険者組合と公爵家お抱えの兵力がありゃ撃ち勝てるぞ!!」

「何を言っている?無駄に戦って、領民達の命を無駄に殺せと言うのか?ハッ、あり得ん、却下だ」

「あ"ぁ!?」


 拳を握り熱く語るグラディスに対し、馬鹿を憐れみ見下すような視線を送るアスター。

 まさかここに至って断られるとは思っていなかったグラディスが激昂する。

 堪えられぬと感情の昂ぶりのままにアスターの胸倉を掴みかかるも、動きを読んだローウェルが瞬時に移動して主人に迫る豪腕を先に掴み捻り上げる。


「ぐぅ……!?ざけんな老耄(おいぼれ)がっ!!」


 五十代後半であるグラディスも平均的な価値観で言えばいい歳の老人だが、それ以上にローウェルは八十代。確かにグラディスよりも老いている。

 その老人をグラディスは冒険者時分に培った剛力と技術で逆手にとって背負い投げる。

 だが、ローウェルは投げられている最中に手を解き、宙を二回転して足から着地した。

 ローウェルを剥がしたグラディスは体内の魔素に"活"を入れ、魔素の循環効率を押し上げると共に両足裏に"練"という技術によって魔素を溜める。それをバネに一気に踏み出しアスターに迫る。

 それを許さないのが一執事にして護衛官のローウェルの仕事だ。

 ローウェルは何の小細工もなく自分の筋力と体の使い方のみで、たった一足によってグラディスとアスターの間に入り、グラディスの首元に懐に入れておいたナイフを当てがう。


「ほっほっほっほっ。僭越ながら私見を申させていただきますと、グラディス様が今旦那様にお手を出してしまいますと以降の考慮の際、攻勢に出るという選択肢が無くなりますぞ。暴力の前に貴族が屈した、という事実は政治的にも民衆の受け止め的にも論外です。それ故、考慮をしたところでグラディス様の意見に沿うことが不可能となります」


 優しげな微笑みを顔に浮かべつつも、グラディスが変な行動を取れば首元のナイフは一切の躊躇無く斬ることを告げている。

 ローウェルの強者としての圧力に当てられグラディスは溜飲を下げる。


「それにですな。今ここでグラディス様がエンドレー公爵家ご当主アスター様に暴行を行えば正教国は外交面を考慮し、正教国と星神教圏内の冒険者組合とその傘下の人類を迫害することになるでしょう。その上、組合は傘下外においても足元を見られ、立場は危うくなるでしょうな」


 そうそう、グラディス様は懲罰房に拘留後、斬首刑でしょうな。と忘れていたと言わんばかりに付け加える。

 ローウェルの考えではグラディスは自らの死よりも組合、もとい組合員である冒険者達の命の方が重く伝わるはずだからだ。

 それは真を射た。

 ローウェルに冒険者達の死を仄めかされたことでグラディスは勢いを弱らせる。

 一連の流れを微動だにせず眺めていたアスターはローウェルの場の治め方はいつも上手いな、などと関係のないことを紅茶を飲みながら考えていた。


「さて、組合支局長殿はお疲れのようだ。早々にお帰り願え」


 アスターは手を叩いて侍女を呼び、無理矢理グラディスを帰らせるように告げる。

 するとドアが開けられ、奥から四人の美しい侍女が現れる。

 四人は仕事用の作り笑いをグラディスに向けると、その見た目には想像もつかないほどの力でグラディスを対合室から引きずり出す。


「クソッ!これだから、お前ら貴族共はでー嫌いなんだよっ!じゃあどうすんだ!?逃げるか?逃げるにしてもどうやって逃げるんだよボケ共!能無しで臆病モンの頭デッカチがぁ!!」

「それ以上は不敬罪に当たります」

「お控えくださいグラディス様」

「ウッセー!触んな!一人で歩けらぁー!」


 グラディスが声を枯らすほどの大声を出してアスターに罵声を浴びせる。

 それを引きずり出そうとしている侍女のうちの二人が諌めるが、聞き耳を持たず力任せに拘束する侍女たちをグラディスは振り解いた。

 わざとらしく歩く音を立て、荒々しく帰っていくグラディスを見送るローウェルはアスターに問う。


「良かったのですか旦那様?」

「ふっ、迎え撃つことを蹴った件か?良し悪しなど聞かずとも分かるだろうローウェル。あれを請けてしまうと何百何千という命が散るのだぞ」

「左様でございますな」


 愚問でございました。と頭を下げて謝るローウェル。


「それでは私めは紅茶でも淹れましょうか」


 そう言って笑うローウェルを横目に、アスターは溜息を零す。


「はぁ……。お前の言っていることも分からなくはないが……、私には私の責務という物があるのだ旧友(とも)よ……」


 口を押さえて聞こえにくくして独り言を呟くアスター。

 赤桃の鎧を着て大陸中を駆け回った元冒険者の幼馴染みを思い返した。


 アスターが彼と出会ったのはいつだったか。

 教会の陽当たりの良い中庭にいた。確か、彼は他の子供達と戯れ合っていたはずである。

 アスターは大人たちに連れ回され教会のどうでもいい話を聞かされ続けて飽きていた。

 そんな時に見た彼はとても輝いて見えた。

 とても自由で、とても力強くてアスター自身にない物を持っている彼にアスターは憧れた。


 懐かしい記憶を垣間見て、今ある自分を省みると何とも言えない痼りのような物が胸中にできた。


「……?」


 それが何かは分からないアスターは気にしないことにして、ローウェルが淹れた紅茶を流し込んだ。


「ではこの後どうするかの方向決定をする会議を開きましょうか」

「ああ、そうしよう。参謀や将校たちを集めておいてくれ」

「かしこまりました」


 一礼して下がるローウェル。

 アスターはそれを見送り、グラディスが食べていた茶菓子を一つ手に取り食べた。

 貴重な糖をふんだんに使って作られているクッキーのはずだが、少し焦げていたのか苦味が口の中で広がる。

 それに顔を顰めて紅茶を飲もうとするが、紅茶は飲み干してしまっていた。

作者「ねえねえ聞いてよコボリス!」

コボリス「ん?どうしたんだダメ男」

作者「え?……え?今なんて……?」

コボリス「ん、気にすんな!で、どしたん」

作者「あ、ああ……。この頃嬉しいことがあったんですよ!」

コボリス「ふーん。そなの」

作者「……あれ?反応薄くない?どういうのか聞きたくない感じ?」

コボリス「言いたいなら言えば?」

作者「喜んで言わせてもらいます!」

    ドゥルルルル…… テテン!

作者「毎日PV100超えでございます!果てしなく嬉しい!!」

コボリス「おお!良かったなー」

作者「皆さん更新速度が遅いこの作品を見てくれてるっ!この上なくありがたいです!!凄く励ましになってます。心から五体投地モンです!!」

コボリス「テンション高えな」

作者「あ、すんません……」


皆さん誠にありがとうございますm(_ _)m

これからも頑張って書いていきたいと思います

最後に、こういうのウザいって方は申し訳ないm(_ _)m

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