クエストを受けようよジュナサン!
先ずお詫びをば。
遅い時間に投稿になってしまい申し訳ないm(_ _)m
次にお伝え、今までどうしたものかと悩みつつも放置していた改行時の字下げをすることができました。
なので全話字下げ修正いたしました。
ご理解とご協力(?)をよろしくお願いします。
朝日が東の空を青く染め始めた頃、俺とデュアルはギルドに来ていた。
デュアル曰く、朝一番にギルドに向かうとその日のクエストが全て貼られているので稼ぎの良いクエストを受けれるらしい。
「ふぁあーぁ」
さすがに毎日この時間に起きているらしいデュアルは元気漲っているが、時々でしかこの時間帯に目覚めない俺は欠伸が漏れる。
朝だからか、欠伸が白い。俺は毛皮があるので寒くはないが、デュアルはとても軽装備でヘソ出し肩出しファッションみたいな格好をしている。
「デュアル、お前寒くないのか?」
「うん?あー、朝は冷えるよね〜。僕の持ってる装備の中で一番良い物がこれだからさ、ちょっぴり寒いよー」
ジュナサン抱きしめて暖めて〜、と言って笑うデュアル。鼻が赤いし、息は白い。本当に寒そうなので天然の毛皮である俺は抱きしめてやる。
が、残念なことに俺の身長は産まれたての頃のようなぶっ壊れ成長を終了しており、今現在の背丈はデュアルの肩より少しデカいくらいなのでアスナロ抱きを敢行するもぶら下がっている感じになってしまった。
むー、12歳の少年にすら背で劣るとは……。残念極まりないな。
「は…はわぁぁあ!ジュナサン可愛過ぎるよ〜〜〜〜!!」
デュアルが鼻血を垂らしながら俺に抱きついてきた。
こいつはこいつで残念な美少年である。まあ、可愛い顔のデュアルに抱きつかれるのは役得というやつだな、うんうん。
「何をクエスト板の前でイチャコラとしてんだデュアル。邪魔になるだろうが、さっさと取って退け!」
「あ、すいませんマスター!」
いつの間にか背後に立っていたギルドマスターに頭を下げて謝罪するデュアル。
まったく、これからは気をつけろよ。と口元を緩めながら釘を刺すギルドマスター。
どこか孫を見るような温かい視線だ。このオッさん見た目に反して孫に甘いタイプのお爺ちゃんらしい。
「怒られちゃったねジュナサン」
「あの顔は怒っていると言えるのか?」
「え?」
ふむ、奇妙な関係だな。
「それじゃこのクエストを受けようかジュナサン」
取ったクエストを前屈みになって見せてくる。
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G級クエスト【花鳥の極彩色の花】
クエスト類別:収集
《内容》花鳥の極彩色の花×3
報酬額:350C
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ん?んん?俺の目は狂ってしまったのだろうか?
今俺の目には収集クエストらしき物が映っている。収集クエストといえば、採取クエストと同じく物を持って帰るクエストだったはずだ。しかも採取クエストは自然に生えている何かを取って来るだけで良いのに対し、収集クエストと表記される物はモンスターを狩って剥ぎ取って来るクエストだったはず。
つまりだ、モンスターを狩る分だけ危険なのだ。
しかもG級と書いてある。G級といえば俺が前世で何千時間とお世話になった某有名ゲーム、化け物狩りの最高ランクの難易度のことだ。あのゲームにも極彩鳥っていたし、少なくとも俺とデュアルだけでどうにかなるとは思えない。
俺はデュアルとパートナーになる際条件を提示しており、それを彼が破るとは思えない。まだまだ短い付き合いだが、デュアルは馬鹿だが約束を破るクズとは違うということは分かる。
これは何かの幻覚なのかな?俺は幻覚耐性は持っていたはずなんだけどなー。
【マスターが得ているのは幻惑耐性ですね】
あーそうか、幻惑耐性だから幻覚が見えているわけですね分かります。
あ、それかアレですね。俺は何気なく文字を読んでいるけど、普通に考えて読めるはずがないのだから間違っていたりしてるとか。おお、この路線は幻覚よりは確率として強いな。
「すまないデュアル、俺は間違った文字の読みをしているか幻覚を見ている可能性が高いようだ。本当にすまないと思うが、読み上げてはくれないか?」
「ええ!?大丈夫ジュナサン!?幻覚なんて誰がかけたんだろ?よくも僕のジュナサンにー!」
拳を握ってそう憤るデュアル。
ああ良い奴だ、やっぱりこいつが約束を破るとは思えない。俺は少し文字の勉強をしたほうが良いかもな……。
「それじゃあ分かり易く読み上げるねジュナサン。えーとーーー
クエストランクG級、クエスト名は花鳥の極彩色の花。クエストの種類は収集で、クエスト成功条件は花鳥の極彩色の花を三つ持ち帰ること。成功報酬額は割高の350C、この額は一人暮らししている大人が一日に使う額の一般的な額かな。あ、350CのCはお金の単価コイを指しているんだ。
何か分かり難かったところない?」
可愛らしく小首を傾げて見せるデュアル。
分かり難かったところではなく、君が何を言っているのかが分からない。
「何言ってるのかなデュアルくん?頭が悪いのは分かってはいたけど、そこまでなの?そこまで悪いの?約束を違えるなんて君はクズだったの?死にたいの?」
「ええ!?な、何か変なこと言ったかな僕!??取り敢えず死にたくはないよ!」
目を見開いて口を大きく開けて、とても驚いたって感じの顔をするデュアル。驚いたのは俺の方だぞ。
まさか約束を破らないと信じていたのに破られたのだから。しかと破ったつもりがないところが悪質だ、責めるに責めづらい。
顎に手を当てて顔の向きをいろいろと変えて考え込んでいるデュアルに向かってため息を吐く。
「いいかデュアル、俺がパートナーになる際に条件を提示したのを覚えているな?」
「うん、忘れるはずないよ!」
「よし、ならそれを全部言ってみろ」
「え?うん、分かった。
条件その1、お昼寝を一緒にすること。
条件その2、ご飯は毎日三食おかわりしても良いこと。
条件その3、自由気ままにいろんな所に遊びに行くこと。
条件その4、毎日お風呂に一緒に入ること。
条件その5、危険な事はしないようにすること………だったよね?」
ん?少し変換されているぞ。本当の条件は以下の通りだったはずだ。
条件その1、昼寝をさせて。
条件その2、飯は毎日三食おかわりさせて。
条件その3、自由気ままに行動させて。
条件その4、毎日風呂に入らせて。
条件その5、危険な事はしない!
俺自らが決めたことだからよく覚えている。若干デュアルの記憶の中で、二人でするようになっているようだ。まあ、あまり大差は無いだろうからその辺は気にしないでいい。
「よし、だいたい合っているな。ならわざと破ったということだな?」
「ええ!?や、破ってないよジュナサン!昨日だって一緒にご飯も食べたし、お風呂にも入ったじゃないか!お昼寝をするには早過ぎるし、自由行動の前にクエスト受けてくれるってジュナサンが言ってくれたんだよ?危ない目にも会ってないし……」
「そこだ」
「え……?」
涙を浮かべながら抗議をするデュアル、しかし最後の部分に触れていることに気づいていなかったようだ。
意識的に破ったというわけではないようなので少し安心した。だが、ここで何も言わなければ危険が迫るので敢えて強く言わせてもらおう。
なに?俺が臆病者だって?知らないのか、自然界で長生きする生命体は臆病者だと決まっているんだぞ。
「このクエストは危ないだろう」
「え?でもG級のクエストだよ?報酬額にしてはあまりにも楽なクエストだよ」
何も危険なんてないよ、と首を傾げるデュアル。
しかしそれに対して指を指して否定を述べる。
「何を言うか、これは花鳥とやらを狩って収集するんだろう?」
「うん、まあ。正確には花鳥を狩った後、綺麗な花に見える尾羽を持ち帰るクエストだね」
「つまりはだ!花鳥達は死にたくないから本気で抗うだろう!お前は知らないのかもしれないが、鶏が死ぬ気で暴れれば成人でも殺されることがあるんだぞ!中学一年生程度の未熟な体じゃあ敵うわけないだろうが!!」
俺が前世で得た知識を語ると、デュアルはポケーっと口を開けたアホ面をした。
鶏?中学一年生?とブツブツと呟いている。デュアルのような子供が独り立ちしているところを見るに中学校はこの世界にはないのだろうと想像できるが、もしかして鶏もこの世界にはいないのだろうか?蛇がいたのに謎な世界だ。
「でもでも報酬額良いのこれしかーーー」
「いいや、他にもあるね!例えばーーーこれとか!」
そう言ってパッと取ったクエストを見せる。
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F級クエスト【錬成術師の部屋片付け】
クエスト類別:助手
《内容》錬成術師の散らかった部屋を整理整頓するのを手伝う
報酬額:4000C
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「絶対こっちの方が良いだろ!何も危ない橋を渡って日銭を稼ぐより、ちょっとお手伝いするだけで11倍以上の報酬だぞ!」
「ええ〜、でも錬成術師はやめた方が良いよー。そのクエスト貼られてから二週間も経ってるのに誰も取ってないのが良い証拠だよー」
デュアル曰く、このクエストは二週間前に貼られたらしい。
F級というのはクエストのランクとしては低く、普通は日銭を稼ぐ程度にもならないらしい。
それなのに高額報酬が出たということでコゾって冒険者達は受けたそうな。しかし蓋を開けてみれば変人錬成術師の部屋はいかにも変を塗り固めたような場所だったらしく、腕に自信のある冒険者達が次々と辞退していった。
それ以降誰も受けなくなったある意味激ヤバクエストだという話だ。
しかし待ってほしい。
所詮はお掃除のお手伝いだ。一家団欒なご家庭では当たり前のように子供がやっているようなモノの一つだ。難しいわけがなかろう。
錬成術師が変人で部屋がミステリーそのもの?そんなことを言ったら俺からしたらこの世界全てがミステリーの宝庫だ。世界全てどころか、今ある俺そのものもミステリーじゃないか。一回死んで魔物に転生して性転換してるんだぜ?なめんなよ。
この上変人のお部屋を見たからってミステリー度的には弱い弱い。某有名ゲームのスライム並に弱い。
それにどんなにヤバいクエストだのなんだの言ったところで、これはモンスターと闘わない。死ぬ可能性は低いどころか皆無と言っても過言ではなかろう。
その上報酬額は最高なのだ。これ以上何かを言うならば、それは贅沢という物だ。
「と言うわけで、これに決定!」
「え?ええ?えぇぇえぇえ!?と言うわけでの『わけ』が分からないよジュナサン!頭の中で考えをまとめて話を打ち切るのはやめよう!?」
待ったをかけるデュアル。話は終わったのにまだ何か言うつもりか、男らしくないな。
まあそんなデュアルは置いといて、すぐ近くのテーブルで朝から酒を木のジョッキで飲んでいるギルドマスターにクエストを受理する旨を伝える。
「良いのか?お前さんの主人はまだ何か言ってるが……」
「主人?何を言ってるんだオッさん、デュアルは俺の主人じゃなく相棒だ」
そう言うと驚いた顔をするギルドマスター。背後で「ジュナサン……」と喜びに満ちた声が聞こえたが今は無視する。
「そうかい、そう言われればパートナーのお前さんにも決める権利はあらぁな!おっし、クエストの受理を確認した。そいつぁ前から厄介物だったことだしありがてぇや、頼んだぞコボルトの嬢ちゃん!」
「ああ、頼まれた。だが嬢ちゃんというのはやめろ」
「おう、これはすまん!えぇとーーー」
「俺の名前はコボリスだ」
「おっしゃコボリス、デュアルのこと頼んだぜ!」
ガッハッハッハッハッと豪快に笑い俺の肩をバンバンと叩くギルドマスター。
なんとなく嫌いになれないタイプだ。清々しい体育会系って感じがする。
「オラ、しっかりしろデュアル!」
デュアルの背を叩いて、ジョッキを片手にカウンターの奥へと歩いて行った。
叩かれたデュアルは背を痛そうに撫でながらニヤニヤと笑っている。俺の中でのデュアルに馬鹿に加えてマゾというタグが加えられたのはこの時。
「えへへ……、ジュナサンと僕は相棒………。無二の関係……えへへ〜」
何か聞こえた気がしたが、ここは敢えての難聴スキル発動で無視することにした。
「ほら、デュアル早目に行ってチャチャっと終わらすぞ」
「あ、待ってよジュナサンー!相棒を置いて行くなんてヒドイじゃないか〜!」
俺たちはギルドを後にした。