自己紹介ターイム
作者遅筆で、書いたら直ぐ投稿をしていますので遅い時間になりましたことをお詫びしますm(_ _)m
「んーっとー……あ、あそこが空いてるよジュナサン!」
賑わいを見せるギルドを抜け、飲食街にある食事処『満腹ウマ飯亭』という看板に腹が膨れた馬の絵が描かれた店に来ている。この店はなんでも一階が飲食店で、二階が宿になっているという飲食宿らしい。
何故他にもある飲食店の中、ここの店なのかというと、新米くんがここの宿を利用しているからだ。俺も新米くんと同じ所に住むのだから、ここに住むわけだ。
さて、腹が減っては戦はできぬ、というわけで俺たちは今客足の多い一階で飯を食べるために席捜しをしていたのだ。
「ジュナサン早く早くー!こっちこっちー!」
手を大きく振りながらピョンピョンと宿の受付の近くで跳んで俺を呼ぶ新米くん。
とりあえず少し落ち着こう、けっこう周りの人の迷惑になっているよ。やはりマナーというものは大事だと思う。
「遅いよジュナサン〜。あと少しでも遅れたら他の人に取られてたかも知れないじゃんかー」
取られていないのにIFの話をしても意味はないだろう。
それより早く飯を注文しろよ新米くん。
「ん?ご飯の注文ならとっくに済ませたよ」
おお、意外と行動の早い奴だ。意外に行動が早過ぎて俺の意見を聞かないとは……。
何か少しドヤ顔をしている新米くんには悪いが、これはパートナーになって直ぐに勃発するのかもしれない、意見の食い違いによる喧嘩が。
悪いがこの勝負、勝たせてもらう……。
「新米くん、どうして俺に聞かずnーー」
「はーい、お待ち〜。オークの塊焼とナイトバイパーの蒲焼き、馬刺しに煮込みワニ鯛〜〜。そしてそして〜、デュアル君特別オマケ山羊鬼ミルク〜」
「ありがとうレミアちゃん」
「い…良いんだよ〜、いっぱい食べて強くなってねデュアルくん〜」
俺が喧嘩の発端となるだろう言葉を言おうとした時、割り込んで飯を持って来た少女。
レミアというらしい彼女が次々とテーブルの上に乗せていく料理はとても興味があるものばかりだった。オークやナイトバイパーというモンスターは名前で姿形が想像できるが、ワニ鯛やバローンというのはどういうものか今一つ分からない。だからこそ興味がふつふつと湧いた。
「ハハッ、いつもオマケをくれるレミアちゃんのためにも強くならなきゃね」
「うん…」
俺が料理に興味津々になっていると、なにやら恋の匂いのようなモノを感じとった。飯を食う前にそんなものを押し当てられるとは不幸だ。
まあ、今はそんなモノはどうでもいい。早くこれらを食べてみたい。
「ん?あ、ごめんねジュナサン!お腹減ってるのに待たせちゃって!ヨダレが凄いことになってるよ」
そう言って手を合わせながら苦笑して謝る新米くん。
謝罪よりも早く食べないか?
「…ジュナサン?なにこのコボルト、もしかしてこれがジュナサン?」
「うん、そうだよレミアちゃん!彼女が僕が前から言っていた凄いコボルトのジュナサンだよ!今日からパートナーになったんだ〜」
少女の質問に対し、とても嬉しそうに俺のことを紹介する新米くん。それと反して先ほどまで笑顔だった少女が無表情になった。いや、どちらかというと起こっている。
どこか陰の増した顔つきで俺の方へとフラフラと近づいて来る少女。ホラーとかに出てきそうな迫力がある。
「へー…、うんうん話には聞いてたよーー……。君があのジュナサンかー……。強いんだって…?フフッ…やっぱりコボルトの毛皮は肌触りが良いわねーー……」
そう言って俺の頬に手を当てて撫でる少女。口調が新米くんと話していた時とは全然違うし、地味に俺の足を踏んでいる。
雰囲気の変わった少女が「可愛いー」と棒読みで言いながら俺に顔を寄せる。
「調子に乗るなよコボルト、あんたはモンスターでデュアル君は人間。可愛がられているのも異種族だから。愛玩動物って言葉知ってるかなー?知らないなら後で調べな。あんたはソレよ」
と耳元で俺には聞こえ、新米くんには聞こえないように囁いた。
最後に顔を離して、両手に万力のような力を込めて俺の顔を抑え「可愛い〜〜」とデュアルに話しかけていた時と同じ声音で言った。しかも満面の笑みで。
怖い、超怖い!何が怖いって絶対この娘ヤンデレじゃん!捕食者の眼をしてるし!!
一見、俺と同じくらいか少し大きい程度の身長でオレンジ髪の似合う可愛い看板娘だが、その正体は新米くんつきのヤンデレでしたよ奥さん!
何この娘マジで超怖い!さっきの笑顔だって、口が笑ってるのに目が笑ってなかったよ!
そんな器用な真似しなくても良いじゃないですか、俺モンスターですよ?しかも前世の記憶があって、前世は普通に人間の男だったんですよ!?
確かに新米くんは中性的な顔つきで、見ようによっては可愛い女の子ですが取りやしませんよ!
「それじゃデュアル君、私はもう行くね〜。また今度ね〜」
「うん、本当にありがとねレミアちゃん!ごめんね?忙しいのに」
「良いの良いの〜」
手を振りながら去って行く少女。
とても恐ろしかったが、最後は乙女の顔をしていた。
「それじゃあ食べよっかジュナサン」
「ああ、そうだな」
怖かったが飯に罪はない。
彼女と対峙している間は引っ込んでいた食欲が、目の前にある料理を見て鎌首を上げる。
一つ盛大に腹の音を鳴らした後、食らいついた。
「あははは、そんなにがっつかなくてもご飯は逃げないよ」
「ングアグング…ごくん。ふふふ、分かっていないな新米くん。ご飯は逃げないが、俺の腹の中に入ってしまえば最早返ってくることは無いんだよ」
「な…に!?まさか一人で全て食べきるつもりかい!?」
「そうだ、私はその顔が見たかったのだ!その絶望に打ちひしがれた顔が!」
そう言ってナイトなんたらの蒲焼きに刺さっている棒を掴み、蒲焼きごと新米くんに突きつける。
まだ馬刺しだけしか手をつけていなかった新米くんが苦しい顔をする。その顔が少し面白かったので思わず笑ってしまう。
笑いながら蒲焼きにかぶりつく。
「あー!そんな食べ方したら僕が蒲焼き食べれないじゃないかジュナサン!」
「ん?男なら食べ物は全て丸齧りでしょうが!」
蒲焼きを全て食ってそう宣言する。
いや、まあ丸齧りが全てとは思ってはないが、ついノリでやってしまったので責められないように言い張った。
俺は普通に箸を使って前世ではご飯を食べていたので、丸齧りなんて行為はこちらに来て初めてしたとは言えない。俺は前世ではリンゴすら切り分けて食べていたし。
俺の宣言を聞いて新米くんが、驚愕と尊敬を孕んだ顔で俺を見つめてくる。
フォークとナイフ、スプーンを丁寧に扱って行儀良く食べていたのにナイフを置いた。そして左手で持っているフォークを振り上げ、焼いたオークの肉塊にブスッと突き刺した。
「あ…」と俺の口から声が漏れた。ナイトなんたらの蒲焼きを機嫌良く全て平らげた俺、次に食べるのはアレだと決めていただけにやられたという気持ちが溢れた。
「男なら…男なら……、丸齧り!」
そう自分を鼓舞するように言うと、勇気を決して小顔な新米くん自身の顔と似たり寄ったりな大きさの肉塊に齧りついた。
モグモグと咀嚼する新米くん。それを俺は残っている馬刺しを頬張りながら見つめる。
周りの賑やかな談笑の声や食事の音が聞こえてくる。それに反比例するかのように静まる俺たちの席。
ごくん、と嚥下した新米くん。
「ど…どうかな?僕は男らしかった?」
上目遣いでそう聞いてくる。
うん、上目遣いが似合う時点で違う気がする。
そんなことよりも俺は気になっていることがあるんだ。
「男らしかった男らしかった。ところで、それ美味しい?」
俺の目が捉えているのは何故か男らしさを求めた新米くんではなく、オークの塊焼だ。
オーク。
彼らが呼ぶビキニ大草原(だったはず、違ったか?)の奥地に存在する樹海にいるモンスターであり、俺が実際に間近で見た数少ないモンスター。
筋肉の搭載量は確実に人のソレを上回っており、大きい割に俊敏な動きを見せる俺の中の化物1号。
実際見たことのあるオークは一体だけで、あのオーク以外のものは見たことはないが、初めて見たオークがオーク達の中でも強力な部類に入っているなどということは無いだろう。つまりあの強者と同じかそれ以上の化物がオークという種には存在するのだ。
少なくとも同じモンスターであるゴブリンを5体倒すことが当たり前なんていう化物は俺からしたら異常だ。俺なんかは楽に倒せるだろうと思っていたスライムすら少し手こずったのだから。
そんな化物の一体、その肉が目の前にあるという不思議。
喰いたい。喰って俺の力にしたい。あの化物を喰らいたい。
そんなことを思ってしまうのも仕方がないと思う。
例え誰かにそれはズルセコだと言われようと、そんなものは自身が研磨した力ではなく仮初めの力だと罵られようと構わない。
そんな綺麗事なんかが俺の恐怖を拭えるのかと問えば、拭えぬが答えなのだから。少なからず緩和できる程度だろう?それならココで力を手に入れたのと大差ないではないか。
まあ、素直に言うと俺は戦闘狂ではないので、取り敢えず死なないように、かつ面倒でなく疲れないように強くなれたらそれで良いんだ。そして家でのんびりまったり生きていければそれで良し!
というわけでソレを食べさせてくれ新米くん。
「え?えぇ…と、美味しかったよ?」
「オッケー、いただきまーす」
そう言って新米くんの持っているフォークごと奪い、大きく口を開けてかぶりついた。
お…おぉぉぉおおおおおおお!!
口の中に入った途端肉汁が溢れた。肉汁に乗って旨味成分が口内を駆け巡り、口の中にちょっとした幸せゾーンが形成される。
良い具合に焼かれた肉が気持ちの良い歯応えを歯に伝える。肉の舌触りは前世の豚そのものだが、なんだろう…一緒に焼かれているオークの皮が何か違う。トマト……トマトだろうか?トマトの皮のように一定以上の力で噛めばプチっと破けるのだ。
そしてこれらのオークの肉の旨さに、タレという人が作り出した旨さが合わさると絶品の一言に尽きる。
生きてて良かった、そう心から思う。これと似たようなものを前にも食べた気がする。思い出せない。いったいどこで、何を食べたのだろう…。それはコレよりも素晴らしいものだった気がするのだけど……。
「ジュナサン…関節…ス………。ジュナサ………キス………。……サンと関節……………。ジュナサンと……?関節…………ニヒヒヒ」
何だか変な声が聞こえてくるが、何を言っているのか分からないので無視する。
ニヒヒヒとずっと口元を緩ませている新米くんよ、君に何があったのかは聞かないでそっとしといてあげよう。
新米くんが何か背筋を襲う寒気のする笑いを終えるまでの間に俺はオーク肉を平らげた。
何故か他にも悪寒を感じる視線を向けられている気がしたが、そちらには敢えて確認を取らないようにした。背後の方で「レミアが怖い顔してるよ女将〜」とか、「レミアなんでコボルトなんか見てるの?」だとか聞こえるのはきっと気の所為だ。
なんというかコチラの人間の街は色々とカオスなところのようだと追記しておく。
「あ、そういえばさ」
俺がギルドで考えてたことを思い出した。
なのでワニ鯛の煮込みを喰いながらではあるが聞くことにした。
「俺、新米くんの名前を聞くの忘れてたんだけど教えてくれない?」
「間接キ……ふぇっ!?え?えぇ…と、僕の名前?」
まだ同じフレーズを口の中でループさせていたようだ。
急に俺に話を振られて驚きつつも話を聞き逃しはしなかったようだ。
「言ってなかったっけ?んー覚えてないなー。まあ、ジュナサンが言うってことは言ってなかったんだよね!それに名前を聞くってことは僕のこと……」
フフフと中性的な顔で可愛らしく笑う新米くん。
ただその笑い方は、その顔でなければ犯罪臭がする。
「まあ、俺のパートナーになる人間のことを新米くん呼ばわりはいかんだろ」
「あ、そだよね……。でもでも!パートナーとして認めてくれているんだ!嬉しいな〜」
俺の言葉を聞いて落ち込んだ後、少し照れくさくも誇らしげに喜ぶ新米くん。彼の表情のレパートリーは凄く多いことが今日だけで分かる。
「ふんぬ!」と注文を取りに行っていた看板娘が声を上げ、持っていたペンらしき物を握り潰したのが視界に映った。マジで怖い。
「で、名前は?」
「あ、うん!僕の名前はデュアル、デュアル=オーロフェイトだよ!よろしくね、ジュナサン!」
オーロフェイト、黄金の運命…だと!?
スライムに遅れを取るような元気弱くんが、そんな大層な名前を持っているとか名前負け感凄いね。
「あーと、俺の名前はジュナじゃないぞ」
「へ?ジュナサンはジュナサンだよ?」
ほうけた顔で何を言っているんだ。
新米くんはアホなのだろうか?ジュナは新米くんが何故か呼び出した名前であって、俺の名前はコボリスだ。
「俺の名前はコボリスだ」
「ジュナサンだよ?」
え?どうしてそんな堂々とした顔で俺の名前を間違えるの?
間違える、というか勝手に名前をつけているみたいな違和感がある。
「もしかしてデュアルく…いや、デュアルは俺の名前を勝手につけたりしてないよな?俺の名前は俺の親からつけられたコボリスだぞ?」
そう確認をとる。
するとどうだろう。驚愕したような顔で口を開くデュアル。
やはりか、やはり勝手にジュナにしていたようだ。
「ジュナサンはジュナサンなのにジュナサンじゃなくてジュナサンでジュナサンだからジュナサンだけどジュナサン違くてジュナサンならジュナサンはジュナサンになるのにジュナサンはどこにいったの?」
「何を言ってるの?」
会話になってないよ?というか言葉の繋がりが不明過ぎて理解できないよ。
つい優しい笑顔と口調になってしまったじゃないか……。
これで決まりだな…。
俺のパートナーとなった相手、年齢的に12歳くらいの少年。
黄金の運命なんていう大層な名前を持っている彼はどうやら。
認めたくないが……。
馬鹿らしい。
「ジュナサンはジュナサンでしょ!?」
「うん、そうだね。俺はジュナだ。うんうん」
「よかったー…」
ふぅ…、と落ち着いたらしくため息を吐くデュアル。
それとは反対にきっと俺は遠い目をしていることだろう。
なんというか、馬鹿と天才は紙一重とよく言うが、アレは事実だったのだな。天才は自分だけの理論があり、それを理解するのは凡人には難解だ。それと同じく、馬鹿にも理論や理屈のような物があり、これまた理解するのは至極難しい。
俺は凡人だと自分でも思っているので、少しこれからの生活に不安を感じずにはいられなかった。
「あ、全部食べちゃったんだねジュナサン!まだお腹空いてる?」
そう腹を鳴らしながら聞いてくるデュアル。
俺の腹が応えるように共鳴した。
ぷっ、とどちらともなく吹き出し笑う。
「そろそろ飲食時間が終わる頃だし、それ以降は食べれるけど頼めなくなるから今からいっぱい頼もうか」
「ああ、任せるよ」
「うん、任しといて!すいませーん!」
デュアルの声を聞きつけて鬼気迫る迫力で駆けてくるヤンデレ看板娘レミア。
デュアルが彼女に頼み、いろいろな料理が運 ばれてきて俺達はソレを残さず食べきった。
飲食時間を過ぎた後、レミアもそこに参加したのは意外だったが久しぶりに誰かと食べる飯は楽しく美味かった。
主人公がヤンデレだと言ってますが、コレはヤンデレに入るのでしょうか?
入らない気がしてならない……。
まあ、良いじゃないですか!HAHAHAHAHAHAHA!!
ピンポンパンポーン
作者は外国人ではございません←分かってるw
風景の描写が苦手なことに気がついた今日この頃、どうしたら良いのだろうか?
イメージングあるのみですかね?
感想お待ちしています。貰えると五体投地しますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
ポイント永久募集中です。貰えると五体投地しますのでよろしくお願いしますm(_ _)m
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